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      「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.06
                        発信日:2009年5月1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
  1.所長コラム
   ●プロパテント時代における各国の動向
  2.知財ニュース
   ●審査請求料の納付繰延制度を開始
   ●「中小企業知的財産権保護対策事業」公募の案内
  3.連載 知財講座
   ●第6回:商標 商品の品質、役務の質の誤認について
  4.イベント案内
   ●「新エネルギーベンチャー技術革新事業」公募の説明会開催
  5.事務所からのお知らせ
   ●審判制度改正について
   ●転居・移転等に際してのお願い

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1.所長コラム
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●プロパテント時代における各国の動向
  今世紀が始まった2001年当時、この21世紀はバイオの時代やITの時代とともにプ
ロパテントの時代になろうといわれていました。プロパテント時代とは、特許に代
表される知的財産の価値が20世紀と比べて格段に重要になり、企業のみならず国家
さへも知的財産の適切な保護と活用なくしては生き残れない時代になるというもの
です。

 当時、米国は、プロパテント政策を更に強化し、各国は、95年に締結されたWTO・
TRIPs協定を履行すべく特許法の改正や知的財産の保護強化に取組でいました。日本
では、バブル崩壊後の失われた10年から如何に立ち直るかが喫緊の課題となってお
り、02年小泉首相が我が国を知的財産立国にすると宣言し、プロパテントに向け大
きく舵を切りました。このように、世界がプロパテント時代に向けまさに漕ぎ出そ
うとしておりました。

 それでは、今世紀が始まって早10年となろうとしている現在、知的財産を巡る世
界の情勢はどのようになってきたのでしょうか。ここでは、特許出願の推移から少
し検証してみたいと思います。

 00年当時全世界の特許出願件数は約130万件であり、主要出願国である日、米、欧
の三極特許庁への出願件数は84万件と全体の65%を占めていました。そして、05年に
は約170万件(三極への出願は約55%)となっています。昨年の統計は未だ出ていませ
んが、世界で出願数がさらに増え、三極の比率がますます低下しているのは間違い
ないと思われます。
  因みに、00年の主要国の特許出願件数と07年の特許出願件数を比べると次のよう
になります。

 日本:43.7万件 → 39.6万件(▲ 9%)、米国:29.6万件 → 43.9万件(+48%)
  欧州:10.1万件 → 14.1万件(+40%)、中国: 4.1万件 → 24.5万件(+496%)
  韓国:10.2万件 → 17.1万件(+68%) 
            (注:括弧内は、00年を基準とした出願の増減割合)

 特に、韓国、中国での出願の増加は、それまでの三極特許庁での話し合いの枠を
広げ、今や両国を加えた五極での話し合いが普通となってきています。両国抜きで
は最早世界の特許制度の調和・協力体制の推進が出来なくなったことを示していま
す。

 以上のように、日本では、特許出願がこの10年殆んど伸びていないのに比べ、米
国は日本を抜き世界一の許出願大国になり、欧州、韓国でも大幅な出願件数の伸び
となっています。中国に至っては、出願件数の伸びは凄まじく最近は毎年15%に近
い増加率を示しています。特許出願は数ではなく質との議論もありますが、数と質
とはそれほど明瞭に区別されるものでは無く、出願件数はその分野の研究開発の活
発度を表すバロメータともいえます。

 我が国が知財立国を標榜するにも拘らず、各国が出願件数を伸ばすなかで、出願
件数の伸びが停滞気味であることに些か危惧を覚えるところです。

 副所長 弁理士 久保山 隆

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2.知財ニュース
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●審査請求料の納付繰延制度の開始
  特許庁は、昨今の景気の急速な悪化を受けて、企業等の資金的な負担を軽減する
ための緊急的な措置として、平成21年4月1日以降に行われる出願審査請求につ
いては、出願審査請求書の提出日から1年間に限り、審査請求料の納付を繰り延べ
できる制度を導入しました。審査請求料の納付繰延制度を実施する期間は、平成21
年4月1日から2年間の予定です。

詳細は、特許庁のWEBサイトをご覧ください。
URL: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/ryoukin/shinsa_kurinnobe.htm

●「中小企業知的財産権保護対策事業」公募の案内
  ジェトロは、「中小企業知的財産権保護対策事業」を実施しています。この事業
は、海外で知的財産権の侵害を受けている中小企業に対し、ジェトロが模倣品・海
賊版の製造元や流通経路の特定、市場での販売状況等の情報を提供し、その侵害調
査にかかった経費の一部を助成するものです。

この事業による助成を希望される方は、ジェトロのWEBサイトをご覧ください。
URL: http://www.jetro.go.jp/services/ip_service/

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3.連載 知財講座
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第6回:商標 商品の品質、役務の質の誤認について
  商標に関して3回目となる今回も、商標の不登録事由(登録できない商標)につ
いてご説明いたします。今回は、「商品の品質及び役務(サービス)の質の誤認に
ついて」です。

 まず、「第2回 登録要件について」において、「普通名称」を普通の方法(明朝
体やゴシック体で単純に横書きしたもの)で表した商標、及び、「商品の内容」を
普通の方法で表した商標は登録できないとした話を覚えていますか。
  ≪商品「缶コーヒー」にゴシック体又は明朝体で『コーヒー』という商標を付け
て出願しても登録はできない≫ という事例でご説明しました。
  登録できない理由は、「缶コーヒー」を取り扱う業者間において『コーヒー』の
名称は普通に用いられているため、一人が独占して他人が使えなくなる弊害が生じ
るのを防止するためです。

 それでは、問題です。
  商品「缶コーヒー」に、『オレンジスッキリ』又は『フレッシュ野菜』の商標を
付けて出願した場合、これは登録できると思いますか?

 答えは、ほぼ確実にノーです。理由は、この商品が店頭に陳列された様子を想像
すると明らかです。
  缶飲料の陳列棚に『オレンジスッキリ』、『フレッシュ野菜』という名前の商品
があれば、誰が見てもそれぞれオレンジジュース、野菜ジュースと思って購入して
しまいます。このように、需要者が商品の品質を誤認する可能性がある商標も登録
できないのです。

 また、「国名」や「地名」を含む商標についても注意が必要です。例えば、商品
「フランス人形」に『ハロー!アメリカ』の商標を付ける事はできませんし、ある
商品に『博多○○』いう商標を付ける場合、原則として、その商品の産地、提供場
所、原材料産地、地域由来の製法等のいずれかが「博多」である必要があります。

 このように、商品・役務の内容をそのまま表す商標だけでなく、他の商品・役務
の質や産地等に誤認が生じるおそれのある商標も登録することはできませんので、
今後、商標をお考えの際はご留意下さい。
 
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4.イベント案内
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●「新エネルギーベンチャー技術革新事業」公募の説明会開催
  独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「イノベーショ
ン推進事業」のうち産業技術実用化開発助成事業、研究開発型ベンチャー技術開発
助成事業、次世代戦略技術実用化開発助成事業に係る研究開発テーマを広く募集し
ています。この公募説明会が九州・沖縄においては、福岡市と那覇市で開催されま
す。
  開催日は、福岡市:5月8日、那覇市:5月11日
  公募期間は、5月上旬~7月上旬
の予定で、助成は、2年以内で5千万円程度/年です。

詳細は、下記のWEBサイトをご覧ください。
URL: https://app3.infoc.nedo.go.jp/informations/koubo/koubo/CA/jitsuyou/H21-2/nedokoubo.2009-03-19.5425234643/

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5.事務所からのお知らせ
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●審判制度改正について
  法改正に伴い、この4月1日より拒絶査定不服審判の請求期間が、拒絶査定の謄
本の送達があった日から「3ヶ月以内」(改正前は「30日以内」)に拡大されまし
た。また、審判請求に伴う明細書等の補正の時期について、改正前は「審判請求日
から30日以内」とされていましたが、「審判請求と同時にするとき」に変更されま
した。
  これに伴い、分割出願の可能時期についても、改正前は、拒絶をすべき旨の最初
の査定の謄本の送達があった日から「3ヶ月以内」(改正前は「30日以内」)に拡
大されました。

 意匠制度・商標制度における拒絶査定不服審判の請求期間についても、同様に期
間が拡大されております。

詳細は、下記のWEBサイトをご覧下さい。 
URL: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/huhukushinpan_kakudai.htm

●転居・移転等に際してのお願い
  住所や氏名等を変更した場合には、特許庁に変更の届出が必要です。ご出願住所
を適正に届け出ていない場合、特許庁からの通知が届かない場合がございます。ま
た、弊所からも審査請求や年金納付のお問い合わせなど、権利に関わる重要な書類
をお送りしておりますので、出願住所や書類送付先に変更が生じましたら直ちに弊
所へのご連絡をお願いいたします。

 ※弊所代理案件の場合、特許庁からの書類は出願中は弊所宛てに通知されますが、
登録後は権利者(本人)宛てに直接通知されます。

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