◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
      「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.19
                        発信日:2011年7月1日
                        発信者:加藤特許事務所
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

★ 目 次 ★
  1.所長コラム
   ●ノーベル賞と特許

 2.知財ニュース
   ●特許庁、中国における第三者による日本国地名の商標出願・権利取得問題に
    ついて発表

 3.連載 知財講座
   ●第19回:意匠 意匠制度について 

 4.イベント案内
   ●平成23年度 知的財産権制度説明会(初心者向け)開催

━━━━━━━━━━━━
1.所長コラム
━━━━━━━━━━━━
●ノーベル賞と特許

 昨年12月、ノーベル化学賞が米デラウエア大のR.ヘック教授、北海道大の鈴木
章名誉教授および米パデュー大の根岸英一特別教授へ授与されました。
  日本人としては、一昨年の下村先生の化学賞、小林、益川両先生の物理学賞受賞
に続く快挙です。

 ご存知のように、化学賞の受賞テーマは「有機合成におけるパラジウム触媒を用
いたクロスカップリング」であり、現在の農薬、医薬の合成や液晶や有機ELポリ
マー材料の製造において画期的な方法を提供しています。
  2000年以降の物理学、化学、生理学・医学賞の所謂自然科学3賞の日本人受賞者
は8名に上り、日本の研究開発力が世界に認められてきた証左であると思われます。

 ところで、ノーベル賞がダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルの遺言
により創設されたことはご高承の通りです。
  ノーベルは、1865年にニトログリセリン(ニトロ)の製造業を開始し、ニトロ運
搬中に使用していたクッション用の珪藻土とニトロとを混合させた粘土状物質が爆
発力を損なうことなくニトロの衝撃に対する危険性を低減することを発見し、この
新しい爆薬の発明について1868年に米国で特許を取得しています。

 その後、世界50カ国で特許を取得し、この爆薬をダイナマイト(ギリシャ語で
「力」の意味)と名づけ生産を開始し、一躍世界の富豪の仲間入りをしたとされて
います。
  このように、特許という独占権で護られた発明だったからこそ、ノーベルが莫大
な財を築くことができ、それが現在のノーベル賞に繋がっていると言えます。

 因みに、日本人ノーベル賞受賞者の特許出願件数は次表の通りです。

                           (2007年 特許庁)
  受賞年   受賞者    受賞分野    出願国(日本:米国:欧州)
  2002年  田中 耕一   化学賞       17: 1: 0
  2001年  野依 良治   化学賞      167:35:69
  2000年  白川 英樹   化学賞       35: 8: 3
  1987年  利根川 進   生理学・医学賞    4: 9: 3
  1981年  福井 謙一   化学賞      191: 9:23
  1973年  江崎玲於奈   物理学賞      29:33:23

 ところで、鈴木先生は、記念講演で「私は特許を取っていないから、興味を持っ
たらご自由に使ってください。」と締めくくり笑いを取られている様子が報道され
ていました。
  これはこれでいい話なのですが、特許に携わる者の一人として違和感を持ったの
も事実です。

 新規有用な技術は、特許の有無に拘わらず世界中の研究者、技術者に使用されて
います。即ち、特許が無いから技術が使われるのではなく、有用・無二な技術だか
らこそ(特許料を払ってでも)使用されるということかと思います。

 日本は資源の無い技術立国であることから、世界最先端の技術を発信し続けると
共にかかる技術を特許で保護し、得られた利益を我が国に還元することが求められ
ています。
  各大学に知的財産本部を創設し、大学発の発明を特許等の知的財産で保護すると
いう国家戦略も、まさにこの点にあると考えます。

 大学はもとより、企業においては、ノーベル賞に値するような大発明を特許出願
せずに放置しておくということがあってはなりません。
  かかる大発明も当初は海の物とも山の物ともつかない漠然としたもの(アイデア)
と思われます。知的財産担当者や弁理士の眼力が求められます。

 弊所は、貴社におけるノーベル賞候補?発明を、知的財産面から保護するお手伝
いをさせて頂ければと思っております。

                        副所長 弁理士 久保山 隆

━━━━━━━━━━━━
2.知財ニュース
━━━━━━━━━━━━
●特許庁、中国における第三者による日本国地名の商標出願・権利取得問題につい
  て発表

特許庁は6月10日、日本の地名が中国で第三者によって商標出願・権利取得され
ている問題についての調査結果と、地方自治体、事業協同組合など向けの、中国で
の商標出願状況無料調査サービスの開始について発表した。

 この調査は、ジェトロ(JETRO 日本貿易振興機構)北京事務所に委託して
行われているもので、2010年度の調査結果では、日本の都道府県名および政令指定
都市名で、2010年3月から2011年2月の1年間に、中国商標当局が商標権の成立を
認めなかったものは、『北海道、秋田、福島、千葉、富山、石川、福井、長野、愛
知、京都、奈良、福岡、川崎』の13件であった。
  一方、中国商標当局が、新たに商標権の公告、登録を認めたものは、『富山、福
井、愛知、山口、香川、佐賀』の6件であった。

 富山、福井、愛知については、商標権の成立が認められなかったものと、新たに
公告・登録された別の出願もあり、これは、同じ地名の商標出願が複数あり、指定
商品(権利範囲)等を勘案しながら、出願毎に審査、判断しているためと考えられ
るとしている。

 詳細は、経済産業省のWEBサイトをご覧ください。
URL: http://www.meti.go.jp/press/2011/06/20110610002/20110610002.html

━━━━━━━━━━━━
3.連載 知財講座
━━━━━━━━━━━━
第19回:意匠 意匠制度について

<意匠の登録要件>
  工業上利用することができるデザイン(視覚を通じて美感を起こさせるもの)を
創作したときは、特許庁に意匠登録出願することにより、その意匠について独占的
な実施権を取得できます。ただし、次の登録要件を満たす必要があります。

1.新規性
  出願前に公知の意匠、刊行物に記載された意匠、インターネット等の電気回線を
通じて閲覧可能となった意匠は、新規性がありません。すなわち、新しく創作され
たデザインであることが登録要件として求められます。

2.非類似性
  新規性がない意匠が登録できないことは前項の通りですが、新規性がない意匠と
同じではないが、美感が共通しているもの(別の視覚的印象が生じないもの)は類
似しているものとして登録ができません。

 ここで、どこまでが類似している範囲かを誰が決めるのかということになります
が、意匠法では「需用者(取引者を含む)」の判断が基準であるとしています。
  現実には、需用者の観点に立った審査官、審判官、裁判官となるでしょう。

 意匠審査においては、2つの意匠が類似しているかどうかの類否判断は次の観点
によって行うこととされています。
(ア)対比する両意匠の意匠に係る物品の認定及び類否判断
(イ)対比する両意匠の形態の認定
(ウ)形態の共通点及び差異点の認定
(エ)形態の共通点及び差異点の個別評価
(オ)意匠全体としての類否判断

 全体が似ていても、需用者(購入者、取引者)の目をひく部分が異なっていると、
非類似と判断されることもあります。

3.創作非容易性
  出願前にその意匠の分野における通常の知識を有する者(当業者)が日本国内又
は外国において公知のデザインに基づいて容易に意匠の創作をすることができたと
きは、創作容易であるとして登録できません。

 例えば、出願の意匠と公知意匠はある部分の形態が異なるが、公知意匠における
その異なる部分をよく知られたデザインに置き換えれば出願の意匠になるようなケ
ースは、創作容易であると判断されます。

4.先願
  同一又は類似の意匠について出願人の異なる2つ以上の意匠出願があったときは、
後に出願した意匠は登録できません。同一又は類似の意匠が2つ以上登録されると、
一意匠一登録の原則に反するためです。

 なお、類似の意匠について同一の出願人が出願したときは、一定の条件を満たせ
ば関連意匠として登録を受けることができます。

━━━━━━━━━━━━
4.イベント案内
━━━━━━━━━━━━
●平成23年度 知的財産権制度説明会(初心者向け)開催

 特許庁は、7月~9月にかけて、全国47都道府県で初心者向けの知的財産権制
度説明会を開催します。これから知的財産権を学びたい方、企業等において新しく
知財部門に配属された方など幅広い方々を対象として説明会を開催します。

 知的財産権の概要を中心に、知的財産権に関連する支援策や地域における各種サ
ービス等も紹介します。参加は事前の申込みが必要です。参加費は無料ですので、
この機会にぜひご参加ください。

 九州での開催日は、
  福岡:7/4,9/6、佐賀:8/19、長崎:9/15、熊本:9/9、大分:7/26
  宮崎:9/2、鹿児島:7/25、沖縄:8/31

 詳細は、特許庁のWEBサイトをご覧ください。
  URL: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/ibento/ibento2/beginner.htm

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

※メールマガジン配信停止・変更方法について
配信停止:
タイトルに『配信停止』をご記入のうえ、空メールをmail@kato-pat.jp宛にお送り
下さい。
配信先変更:
タイトルに『配信先変更』と本文に変更後の名称・アドレスをご記入のうえ、
mail@kato-pat.jp宛にお送り下さい。

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

◆加藤特許事務所
URL:http://www.kato-pat.jp/

編集・発行: 加藤特許事務所 -メルマガ事務局-
福岡市博多区博多駅前3丁目25番21号 博多駅前ビジネスセンター411号
TEL:092-413-5378 E-mail:mail@kato-pat.jp
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆