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     「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.24
                        発信日:2012年5月1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.所長コラム
  ●先願主義と先発明主義

 2.知財ニュース
  ●地域団体商標制度開始から7年、500件目の登録に「仙台いちご」
  ●サトウ食品工業、切り餅特許訴訟の知財高裁判決不服として、最高裁に上告

 3.連載 知財講座
  ●第24回:特許「発明の新規性喪失の例外について」

 4.事務所からのお知らせ
  ●弁理士 遠坂 啓太 入所について
  ●審査請求料・特許料(年金)の減免制度改定(本年4月1日施行)について
  ●売買希望の新着商標(アット商標)

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1.所長コラム
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●先願主義と先発明主義

 “米国が先発明主義から先願主義へ移行”との記事が、昨年9月16日の新聞に
大見出しで掲載されました。オバマ大統領が米国特許改正法案(リーヒ・スミス米
国発明法案)に署名したというものです。
 このことにより、総ての国が先願主義を採用することになりました。なお、施行
は2013年の春になる予定です。

 特許制度の理念は、新規・有用な発明を公開する代償として、一定期間、その発
明者に独占権である特許権を与えるというものです。
 それでは、同一の発明について、異なった日に二以上の出願がなされた場合、誰
に権利を与えたらよいのでしょうか。同じ発明に二つの権利(独占権)を付与する
ことは、二重特許(double patenting)禁止の原則により認められておりません。

 このような場合の特許付与方法として、現在、世界には次の二つの方法が採用さ
れています。先願主義と先発明主義です。先願主義とは、先に特許庁に出願した者
に特許を与える方式です。特許を取得するためには、1日でも早く出願することが
求められます。

 一方、先発明主義とは、先に発明をした者に特許を与える方式です。最初に発明
した人に特許を与える点で理に適っていますが、発明を完成した時期を客観的に判
断することが難しいという問題があり、現在米国を除きこの制度を採用している国
はありません。

 ところで、世の中には同じことを考えている人が必ずいるもので、同様な発明が、
競合企業や大学からほぼ同時に出願されることは珍しくありません。

 有名な話として、天然染料として有名な茜の主成分であるアリザニンの製法は、
一日の差で英国の化学者パーキンではなく、当時農業国であった独国のグレべに与
えられ、この特許権取得が、独国の染料工業の興隆、ひいては化学工業の発展に大
きく寄与したといわれています。

 また、発明家ベルが米国特許局に電話の出願をした僅か1時間後に発明家グレー
が同じく電話の発明を出願したが、このわずかな差が、電話の発明家としてのベル
の名を不朽のものとすることになったとされています。

 このように、先願主義の下では、1日も早く出願することが求められ、1日の差
はそれまでの研究努力、開発投資を無に帰せしめることにもなりかねません。

 冒頭にご説明しましたように、米国が終に先願主義へ移行することになりました。
実は、このことは、日本を含む各国が30年も前から米国に対し要望を続けてきた
ことでした。

 先願主義の採用により、米国における特許取得の透明性が高まると共に、世界の
特許制度の調和(ハーモナイゼーション)を阻害してきた先願主義と先発明主義と
いう制度の対立がなくなったことから、世界的な特許取得と保護に向け新たなステ
ップに入ることになったといえます。

 当所では、米国の法改正はもとより、諸外国の動きに目を配り、皆様方の国内外
での知的財産権の獲得とその活用のお手伝いをさせて頂きます。

                        副所長弁理士 久保山 隆

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2.知財ニュース
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●地域団体商標制度開始から7年、500件目の登録に「仙台いちご」

 特許庁は4月11日、地域ブランドの保護・振興のために導入した「地域団体商
標制度」が、平成18年4月の制度開始から7年目を迎え、4月6日付けで「仙台
いちご」が商標登録されたことで、登録件数が500件に到達したと発表しました。

 現在までの出願件数は合計1013件で、初年度の平成18年度が698件と多く、以後
19年度:110件、20年度:71件、21年度:54件、22年度48件、23年度31件
と漸減傾向となっています。

 詳細については、下記のURLをご覧ください。
URL: http://www.meti.go.jp/press/2012/04/20120411003/20120411003.html

●サトウ食品工業、切り餅特許訴訟の知財高裁判決不服として、最高裁に上告

 昨年11月発行のメールマガジンでお知らせしました「サトウ切り餅事件」(越後
製菓が、自社特許権を侵害されたとして、サトウ食品工業を訴えた事件)で、知財
高裁は、3月22日最終判決として、サトウ食品工業に対し、対象製品の製造販売差
止めと約8億円の損害賠償を命じました。

 しかし、サトウ食品工業は、4月2日この判決を不服として、同日付けで最高裁に
上告したと発表しました。今後の裁判の動向について、何か動きがありましたら、
本メールマガジンでお知らせします。

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3.連載 知財講座
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第24回:特許「発明の新規性喪失の例外について」

 我が国の特許制度においては、特許出願より前に公開(テレビで放映、店で販売、
学会で発表、インターネットで公表など)された発明は原則として特許を受けるこ
とができません。即ち、特許を受けることができる「発明」は、今までに世の中に
ない「新しいもの(新規性を有するもの)」でなければなりません。

 既に誰でもが知っているような発明に特許権という独占排他権を与えることは、
特許法の目的の一つである「産業の発達に寄与すること」にならず、却って、それ
を阻害することになりかねないからです。

 しかし、刊行物への論文発表等によって自らの発明を公開した後、その発明につ
いて特許出願しても一切特許を受けることができないとすることは、発明者にとっ
て酷な場合もあり、また、産業の発達に寄与するという特許法の趣旨にもそぐわな
い面もあります。

 このことから、特許法では、特定の条件の下で発明を公開した後に特許出願した
場合には、先の公開によってその発明の新規性が喪失しないものとして取り扱う規
定、即ち、発明の新規性喪失の例外規定(特許法第30条)が設けられています。

 この例外規定を受けるためには、新規性を失った日から6か月以内に特許出願を
しなければならないほか、例外規定の適用を受けたい旨の書面や証明する書面を決
められた期間内に提出しなければなりません。

 しかしながら、この例外規定は冒頭に記載した原則に対する例外規定であること
に留意する必要があります。仮に、この例外規定の適用を受ける特許出願を行った
としても、例えば、公開後、出願前に第三者が同じ発明について先に特許出願して
いた場合や先に公開していた場合には、特許を受けることができません。

 従って、発明について確実に特許権を取得するためには、その発明の発表前(公
開前)に特許出願を完了させておくことが必要です。

※この例外規定は、各国によって取り扱いが異なり、特に欧州特許法では、例外の
 対象範囲が非常に狭く、日本と同様に考えることは危険です。外国出願するよう
 な重要な発明については、先ずは公開前の出願が求められます。

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4.事務所からのお知らせ
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●弁理士 遠坂 啓太 入所について

 この4月に、当事務所では、新進気鋭の弁理士 遠坂 啓太君を迎えました。

 遠坂弁理士は、国立八代工業高等専門学校生物工学科を卒業後、民間企業、産業
技術総合研究所を歴任しての入所です。

 経済が大きく変化する今、我々特許事務所に求められているものは、既成概念に
囚われない真にお客様に役立つサービスであると思います。遠坂弁理士は希望と夢
に燃える28歳、柔軟な頭脳と使命感で必ずやお客様の要望に応えてくれるものと確
信しております。

 他の弁理士同様、遠坂啓太弁理士に対し、倍旧のお引き立てを賜りますよう心よ
りお願い申し上げます。

●審査請求料・特許料(年金)の減免制度改定(本年4月1日施行)について

 個人・中小企業及び大学等を対象にした審査請求料・特許料(年金)の減免制度改
定が、本年4月1日より施行されます。この制度改正により減免を受けるための要件
が緩和され、減免の対象範囲が拡大します。改正の概要は次の通りです。

1.他者から承継した発明についても、新たに減免対象になります。
2.特許料(年金)の減免期間が、「第1年分から第10年分」に拡充され、第4年分か
ら第10年分までの特許料(年金)が新たに減免対象(半額)となります。
3.現行、法人として「法人税が課されていないこと」が要件の1つとなっています
が、改正により、「設立後10年を経過していないこと」を満たす場合にも、減免
対象となります。

 減免制度の詳細及び減免申請につきましては、弊所にお問い合わせください。

●売買希望の新着商標(アット商標)

 商標ポータルサイト『アット商標』の商標売買フォームに3,4月に登録された
販売希望商標のご紹介です。登録商標や権利範囲の詳細は、『アット商標』トップ
ページの『販売商標一覧へ』ボタンよりご確認いただけます。

 興味のある登録商標がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

<3月6日掲載>
[商標]漱石               [区分]第30類
[商標]ロボ検              [区分]第41類
[商標]ロボテスト\ROBOTEST       [区分]第9,16,28,41類
[商標]ウォーキングディクショナリー\Walking Dictionary [区分]第9類
[商標]MORPH\モルフ           [区分]第9,16,28類

<3月8日掲載>
[商標]777\FIRE SEVEN           [区分]第9,28類

【アット商標】 http://www.a-shohyo.com/

 

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◆加藤特許事務所
URL:http://www.kato-pat.jp/

編集・発行: 加藤特許事務所 -メルマガ事務局-
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