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     「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.26
                        発信日:2012年9月4日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.所長コラム
  ●大学でのR&Dと知的財産について

 2.知財ニュース
  ●特許庁、デザイン事例集「なるほど、日本の素敵な製品デザイン…」第2弾
   発行

 3.連載 知財講座
  ●第26回:意匠『意匠の新規性の喪失の例外について』

 4.イベント案内
  ●平成24年度実務者向け知的財産権制度説明会開催

 5.事務所からのお知らせ
  ●韓国の商標新制度について

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1.所長コラム
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●大学でのR&Dと知的財産について

 私は、現在、大学で産官学連携、知的財産を担当している。最近、企業の方と、
共同研究で画期的な成果というのが必ずしも出ていないのではないかという話をよ
くする。
 これはいろんな理由があると思うが、日本の企業は物をつくる能力を持っている
けれども(一部にイノベーティブな企業はもちろんあるが)、大半はキャッチアッ
プ体質からなかなか脱却できないでいることが原因なのではないかと。

 そのため、大学からの研究開発支援を期待しているが、いわゆる従来モデルの延
長で、企業、大学、ともにイノベーティブなものを作る体制になっていないのでは
ないかと思われる。

 また、世界的競争の中で、スピードアップをして目標に最短で到達するためのイ
ノベーションモデルができていない。例えば、よく言われるオープンイノベーショ
ンであるが(これももちろん目的ではなくて手段であり必要であれば活用すべきで
あるが)、そのための事業戦略とか知財戦略が作れていないのではないか。

 さらに欧米では、大学そのものがR&D拠点になっているという場合もあり、日
本の大学を日本の企業のR&D拠点として位置づけるための討論、合意が必要だと
考えている。

 右肩上がりの時代においては、税収は経済界に任せて、大学はそこから研究費を
受け取ることによってアカデミックな研究に専念できた。

 しかし、その経済界が、現在非常に厳しい状況で、イノベーティブな製品を開発
できなければ、また税収のほとんどを社会保障に使うことになれば、大学の研究そ
のもの、アカデミックな研究そのものが十分に行えなくなる。大学はR&Dに出て
いかざるを得ないのではないかと考えている。

 また、大学特許の取り扱いについては、米国の大学のライセンス収入は日本の150
倍であるが、タイムラグだけの問題なのか、知的財産についての価値観、損害賠償
の考え方の違いであるのか、いずれにしろ現在のビジネスモデルで米国と同じとこ
ろまで到達するには限界がある。

 大学は何のために特許を取得しその移転を行うのか、イノベーションの達成の観
点から大学技術移転モデルをもう一度考える時期に来ているように思われる。

              奈良先端科学技術大学院大学 知的財産本部長 教授
                         客員 弁理士 久保 浩三

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2.知財ニュース
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●特許庁、デザイン事例集「なるほど、日本の素敵な製品デザイン…」第2弾発行

 特許庁は8月14日、意匠権を中心とした産業財産権の活用戦略を検討する際の
参考事例としてまとめた事例集第2弾「なるほど、日本の素敵な製品デザイン戦略
と知的財産権の事例集-2」を発行しました。

 本事例集は、デザインを活用している企業の知財担当者、デザイン担当者等にヒ
アリング調査を実施し、結果を取りまとめたもので、全国の経済産業局特許室、知
財総合支援窓口および(独)工業所有権情報・研修館にて無料配布を行っています。

 なお、特許庁サイト上でもPDFデータが下記URL先に掲載されていますが、これは
30ページの概要版となっています。

 本事例集の問合せ先は、下記のURLをご覧ください。
http://www.jpo.go.jp/seido/s_ishou/design_chizai_jirei2.htm

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3.連載 知財講座
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第26回:意匠『意匠の新規性の喪失の例外について』

 既に公知となった意匠は、新規性がないので、以後に意匠登録出願しても、原則
として意匠登録は認められません。

 しかし、意匠は物品の外観であるため、人の目に触れればすぐに模倣される可能
性があり、権利者の意に反して出願前に公知になる機会が多いことが想定できます。

 また、意匠は、物品を販売、展示し、需要者の評価を見た上で意匠登録出願の是
非を判断できた方が都合がいいことが考えられます。

 そこで意匠法では、次の場合に、新規性がなくなった意匠について、例外的に新
規性についての要件を問わないこととしています。

(1)意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して公知となった場合で、その公
知となった日から6月以内に意匠登録出願したとき(意匠法第4条第1項)。

(2)意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して公知になった場合で、そ
の公知となった日から6月以内に意匠登録出願したとき(同 第2項)。

 (2)の場合、出願時に、願書にその旨を記載するとともに、30日以内に証明
書を提出する必要があります(同 第3項)。

 (1)の場合にその手続が不要であるのは、意に反して公知になったことを出願
人は出願時には認識しておらず後で知ることが多いことを考慮したためです。

 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して公知になったときに提出する
証明書としては、展示会の主催者や販売店の責任者の証明書、新聞や雑誌の記事の
コピー等があります。

 なお、特許(実用新案登録)について、以前は新規性喪失の例外を受けられる行
為として、刊行物発表や学会発表等の一定の場合に限られていましたが、今年4月
に施行された法改正で、特許についても、特許を受ける権利を有する者の行為の範
囲が広がり、意匠の場合と同様となりました。

 新規性喪失の例外の適用を受けた出願でも、他の登録要件、例えば先願の規定は
適用されますので、他人の同一又は類似の意匠登録出願により拒絶されます。
また、他人が独自に同一又は類似の意匠を創作して公知にしたときは、その前に
公知にした自己の意匠について新規性喪失の例外の適用を受けて意匠登録出願をし
ても、拒絶されます。

 このように、新規性喪失の例外の制度は、出願人としては有効に活用できますが、
できるだけ発表前に出願することが肝要です。

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4.イベント案内
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●平成24年度実務者向け知的財産権制度説明会開催

 特許庁は、知的財産権の業務に携わっている実務者の方を対象に、制度の円滑な
運用を図るため、実務上必要な知識の習得を目的とした実務者向け説明会を全国の
主要都市20ヶ所で開催します。

 本説明会では特許・意匠・商標の審査基準やその運用、審判制度の運用等につい
て、特許庁職員が解説します。参加の場合は、事前申込が必要で、参加は無料です。
九州・沖縄での開催日は、次の通りです。

福岡市:10/2,10/29,11/26,12/17
熊本市:9/14,10/19
那覇市:9/28

 詳細は、下記のURLをご覧ください。
http://www.jiii.or.jp/h24_jitsumusya/index.html

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5.事務所からのお知らせ
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●韓国の商標新制度について

 韓国で「音・におい」の商標が今年3月より導入されました。
施行から4ヵ月の出願は、音が37件、においは0件です。

 音やにおいの商標を登録するためには、「使用による特別な顕著性」が必要なた
め、これらの登録のハードルは非常に高いものとなっています。

 日本からは、久光製薬株式会社が音の商標を出願中です。下記のURLのサイトで
音・においの出願を検索することができます。ご参考ください。

http://eng.kipris.or.kr/
  → Trademark → Advanced Search → Vienna Code(DR)
  音は「980100」、においは「980200」を入力

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