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     「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.27
                        発信日:2012年11月1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.所長コラム
  ●新人弁理士として思うこと

 2.知財ニュース
  ●アップルとサムスン電子との特許侵害訴訟合戦

 3.連載 知財講座
  ●第27回:特許『プロダクトバイプロセス特許』

 4.事務所からのお知らせ
  ●知的財産セミナーのご案内

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1.所長コラム
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●新人弁理士として思うこと

 本年4月より、加藤特許事務所に勤務しております若干28歳“新進気鋭”の弁理
士 遠坂と申します。入所して、およそ半年が過ぎました。

 私は、平成22年度の弁理士試験に合格し、今年4月に弁理士登録をしましたが、
それまで、企業等の研究開発部門を中心に仕事をしており、特に研究開発の状況に
応じた特許出願について重要性を感じております。

 最近では、日常生活の中でも、特許訴訟や商標侵害に関するニュースが連日のよ
うに大きく取り上げられるようになってきており、知的財産に関する情報に接する
機会も多くなってきました。

 先日の京都大学・山中教授のノーベル賞受賞のニュースの直後にも、この偉大な
研究成果を保護する知的財産権についてテレビ番組で取り上げられ、知的財産が注
目されていること、そして、その重要性を皆様も感じていらっしゃることと思いま
す。

 さて、弁理士は、「知的財産の専門家」です。というのも、その試験科目が、特
許法、実用新案法、意匠法、商標法、これらに関する条約、不正競争防止法、著作
権法に関するもので、その短答試験、論文試験、口述試験に合格しなければなりま
せん。

 前述した、特許、意匠、商標、著作権等は、法律による保護を受けることができ
る知的財産権で、弁理士はこれらに関する代理業務を行うことができる国家資格で
す。知的財産権法と言っても、法律によって、それぞれ保護対象や保護される要件
が異なります。

『商標権について存続期間を設けた趣旨を、特許権の存続期間の趣旨に言及しつつ
述べよ。』

 これは、私が合格した年の弁理士試験問題の一つで、非常に印象に残っています
が、商標と特許で法律の目的や保護態様が異なることを理解していなければ答えら
れない問題です。

 試験を通して勉強し、また特許事務所に勤務するようになってから、以前ではそ
れほど意識していなかったことでも、世の中にあるものは本当にさまざまな知的財
産権で保護されていると感じております。そして、これからも、たくさんの知的財
産権で保護されるべきものが、生まれてくると思います。

 お客様の、商品や製造方法等に関する知的財産権を保護するために、どのような
法律による保護が最適であるかを提案し、その手続きを円滑に行えるように、これ
からもより一層の研鑽を積み、皆様のご期待に沿えるように頑張りますのでよろし
くお願いいたします。

                           弁理士 遠坂 啓太

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2.知財ニュース
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●アップルとサムスン電子との特許侵害訴訟合戦

 アップルとサムスン電子との間で、スマートフォンやタブレット端末に関する特
許で、米国・ヨーロッパ・韓国等において、特許侵害訴訟合戦を繰り広げています。

 米国での、アップルがサムスン電子を訴えた特許侵害訴訟において、カリフォル
ニア州の連邦地方裁判所は、現地時間8月24日、サムスン電子の特許権の侵害を
認め、同社に10億5千万ドル(約840億円)の損害賠償支払いを命じました。

 一方、わが国においては、アップルが、パソコンと携帯端末間での画像や音楽な
どのファイルの同期方法に関する自社特許(特許第4204977号)を侵害されたとし
て、サムスン電子を提訴していましたが、8月31日東京地裁は、

『サムスン電子製品のファイルの同期方法は、ファイル名とファイルサイズだけを
用いて判断しており、歌手名や曲名等を含めて判断するアップルの特許発明の技術
的範囲に属するとは認められず、特許権を侵害していない。』

と判断し、アップルの請求を棄却しました。

 しかし、アップルは10月15日、この東京地裁判決を不服として、知財高裁に
控訴しました。今後の裁判の動向に注目し、判決が確定しましたら、本メールマガ
ジンでお知らせします。

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3.連載 知財講座
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第27回:特許『プロダクトバイプロセス特許』

 平成24年1月27日 知的財産高等裁判所で、「プロダクトバイプロセスクレ
ームの解釈」について大合議の判決が下されました。

 特許法上、発明は「モノ」の発明か、「方法」の発明に分けられます。
 しかし、モノの発明であっても、そのモノを特定するために請求項(クレーム)
に製造方法を記載する必要が生じることがあります。例えば、新規なタンパク質の
構造のような場合です。

 このような請求項は、「プロダクトバイプロセスクレーム」と呼ばれます。
 このような記載がされているとき、その権利範囲はどこまで及ぶだろうというこ
とが争点となりました。

 プロダクトバイプロセスクレームで記載されているとき、物質として同一であれ
ば製造方法が異なっていてもクレームに含まれるとする考え方は「物特定説」、一
方、物質として同一であっても製法が異なればクレームに含まれないとする考え方
は「製法限定説」と呼ばれ、従来、議論が分かれていました。

 今回、大合議の判事事項は、原則としてクレーム解釈は製法限定説とするべきで
ある、ただし、特段の事情があれば、(製法に限定されない)同一の物質に及ぶと
しています。

 これは、従来の特許庁の審査基準と異なるものです。しかし、知財高裁で、この
ような判断がなされたため、特許庁の審査基準も見直される可能性があります。

 また、今後、訴訟の場においては、製法による限定をしなければならないクレー
ムであったことを、特許権者が立証する責任があると判断されるため、出願時から、
発明された技術に関する事情を十分に整理しておくことが求められます。

 先ほどの、新規なタンパク質の構造のように、特に、化学関係の発明の場合、製
造方法によって得られる化合物が異なることが多く、また、モノとして特定するこ
とが困難だったり不適切だったりする場合があり、どうしても製造方法による特定
をしなければならない場合もあります。

 先願主義の下、一日も早い特許出願をすることが求められますが、発明を単に製
造方法で規定すると、これらのリスクがあるため、できるだけ、得られたものの化
学構造や物性といったデータを取得し、それから特許出願した方がよいといったジ
レンマが生じることになります。

 弊所では、常に最新の法改正や判例についてフォローし、このような審査、訴訟
の場でどのように判断される可能性があるかといった点についても検討し、状況に
応じた最適なサポートをさせていただきます。

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4.事務所からのお知らせ
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●知的財産セミナーのご案内

 産業医科大学では、平成24年11月22日(木)16:30~18:30 に大学本館2号館で、
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の知財契約管理室長 高須 直子氏を迎え「iPS細
胞技術の進展と知的財産」のテーマでセミナーが開催されます。

 高須氏は、今年度ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中教授の下で、CiRAに
おいて知的財産と契約管理を担当されており、iPS細胞の開発の現状、特許出願や
ライセンス戦略や山中教授の特許についての考え方等をご講演頂くことになってい
ます。

 弊所、副所長の久保山が、同大学の産学連携・知的財産本部に知的財産アドバイ
ザーとして関与している関係で、皆様にご案内させて頂きます。

[申込み・問合せ先]
 産業医科大学 大学事務部 研究支援課
 TEL:093-280-0532(ダイヤルイン)
 メールアドレス:chizai@mbox.pub.uoeh-u.ac.jp

(締切:11月15日(木)17:00まで)

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