◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆             「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.33
                        発信日:2013年11月 1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.所長コラム
  ●高専との包括連携協定の取り組み

 2.知財ニュース
  ●東京地裁、「iPod」特許侵害訴訟で、アップルに約3億円損害賠償命ず
  ●米国特許商標庁、スティーブ・ジョブズ特許を再審査の結果、有効と判断

 3.連載 知財講座
  ●第33回:特許「新規性喪失の例外について(各国比較)」

 4.事務所からのお知らせ
  ●株式会社久留米リサーチ・パークのご紹介
  ●売買希望の新着商標(アット商標)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1.所長コラム ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●高専との包括連携協定の取り組み

 昨年12月に、九州沖縄地区国立高等専門学校と弁理士会とで包括連携協定を締結し、今年度から各高専に支援弁理士を設定して様々な取り組みが行われています。

 私も、母校である八代高専(現・熊本高等専門学校八代キャンパス)の支援弁理士として、学生の知財意識向上のための取り組みや、先生方の研究成果を知財に結びつけるための相談等を担当させて頂いております。

 思い返してみると、10年前の卒業生である私は、学生時代ほとんど知財に関する情報に接する機会がなく、就職した会社で特許出願を行うとき、何からすればよいのかわからなかった記憶があります。

 一方で、この10年の間に、知的財産の重要性が、漸次認識されるようになったこともあり、現在では高専の授業等でも知財に関する内容のものが取り上げられるようになってきています。

 また、学校での研究内容を企業の事業化に結び付けるべく、特許出願等の知的財産権を取得するための取り組みも増えてきています。このような環境下、10年前とは異なり学生時代から知財に関する情報に接する機会が多くなってきています。

 母校の正門には「環境は人を創る」と書かれたモニュメントがあります。高専は、地域の特に産業界に優秀な人材、技術を提供する機能を持つ機関です。

 その環境で育まれる人材が実践的能力として知財感覚をもち、磨かれる技術が知的財産権として保護され活用されていくべく、微力ながら卒業生だから感じる感覚で力になっていければと思っています。

                           弁理士 遠坂 啓太


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2.知財ニュース ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●東京地裁、「iPod」特許侵害訴訟で、アップルに約3億円損害賠償命ず

 日本で販売しているアップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」に、自社特許を侵害されたとして、その特許の発明者齊藤憲彦氏が、アップル日本法人に対し100億円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は9月26日、特許侵害を認め、アップルに約3億3千万円の支払いを命ずる判決を下しました。

 対象となった特許は、特許第3852854号「接触操作型入力装置およびその電子部品」で、東京地裁は、iPodの曲の選択や早送りなどに使う「クリックホイール」と呼ばれるものは、この特許の技術的範囲に含まれると判断しました。

 なお、発明者斎藤憲彦氏は、10月9日、この賠償額を不服として控訴しました。アップル側もすでに控訴しています。今後の知財高裁での判決が注目されます。


●米国特許商標庁、スティーブ・ジョブズ特許を再審査の結果、有効と判断

 スマートフォンなどのタッチスクリーン操作に関する発明で、発明者に故スティーブ・ジョブズ氏が含まれ、「スティーブ・ジョブズ特許」と知られている特許(USP7,479,949)は、米国特許商標庁で、一度無効と判断されましたが、同庁の再審査の結果、9月4日付けで再び有効となったことが明らかになりました。

 この特許は、サムスン電子や、他のAndroid端末メーカとの特許侵害訴訟おいて重要特許と位置づけられており、アップルは今後、これらの訴訟について有利な立場に立つと思われます。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3.連載 知財講座 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 第33回:特許「新規性喪失の例外について(各国比較)」

 わが国の特許制度においては、特許出願の日より前に公開された発明は、原則として特許を受けることはできません。しかし、刊行物への論文発表等によって自らの発明を公開した後に、その発明について特許出願をしても一切特許を受けることができないとすることは、発明者にとって酷な場合もあり、また、産業の発達への寄与という特許法の趣旨にもそぐわないといえます。

 そこで、特許法では、発明の公開等により新規性が失われても、その日から一定の猶予期間内(日本では6か月以内)に特許出願を行えば、一定条件の下、その発明の新規性が喪失しないものとして例外的に取り扱う規定、即ち、発明の新規性喪失の例外規定(特許法第30条)が設けられています。

 このような新規性喪失の例外規定(グレース・ピリオド)は、日本以外の主要国・地域においても設けられており、その概要は以下の通りです。

1.米国
(1)例外規定の対象となる公開態様は制限がありません。特許公報での公開も含まれます。
(2)猶予期間は、新規性を喪失した日から12か月です。
(3)パリ条約による優先権主張を伴う場合の取扱い:
発明の開示(新規性を喪失)した日から1年以内に日本出願をし、その後、その日本出願に基づく優先権主張により米国出願またはPCT出願をした場合でもグレースピリオドが適用されます。

2.欧州
(1)例外規定の対象となる公開態様は、国際博覧会への出品又は出願人等による明らかな濫用となっています。明らかな濫用とは、例えば、権利者の意に反する公開などを指します。日本のように学会発表、刊行物公知に対する救済規定はありません。
(2)猶予期間は新規性を喪失した日から6か月です。
(3)パリ条約による優先権主張を伴う場合の取扱い:
当該新規性喪失の日から6月以内に欧州に出願を行い、所定の手続を行わなければ、パリ条約による優先権主張を伴う場合であっても、新規性喪失の例外規定の適用を受けることはできません。

3.韓国
(1)例外規定の対象となる公開態様は制限がありません。但し、学会については、韓国知財庁に指定された学会が適用対象です。
(2)猶予期間は、新規性を喪失した日から12か月です。
(3)パリ条約による優先権主張を伴う場合の取扱い:
当該新規性喪失の日から12月以内に韓国に出願を行い、所定の手続を行わなければ、パリ条約による優先権主張を伴う場合であっても、新規性喪失の例外規定の適用を受けることはできません。

4.中国
(1)例外規定の対象となる公開態様は、中国政府が主催し又は承認した国際展覧会で初めて展示した場合、指定の学術会議又は技術会議で初めて発表した場合、又は特許出願人の許可を得ずにその内容を漏らした場合です。但し、学会については、中国専利局に指定された学会が適用対象です。
(2)猶予期間は、新規性を喪失した日から6か月です。
(3)パリ条約による優先権主張を伴う場合の取扱い:
発明の開示(新規性を喪失)した日から6月以内に日本出願をし、その後、その日本出願に基づく優先権主張により中国出願またはPCT出願をした場合でもグレースピリオドが適用されます。

5.台湾
(1)例外規定の対象となる公開態様は、試験・研究目的の発表、政府が主催若しくは認可する展示会などへの陳列・展示、出願人の意に反する公知の場合、又は出願人が自らの意思により刊行物に発表した場合です。
(2)猶予期間は、新規性を喪失した翌日から6か月です。
(3)パリ条約による優先権主張を伴う場合の取扱い:
当該新規性喪失の日から6月以内に韓国に出願を行い、所定の手続を行わなければ、パリ条約による優先権主張を伴う場合であっても、新規性喪失の例外規定の適用を受けることはできません。

 以上のように、新規性喪失の例外規定は国毎に取扱いが異なり、特に欧州では要件が厳しいものとなっています。また、新規性喪失の例外規定は、あくまでも新規性を喪失しないという取り扱いをするだけであって、出願日が遡るわけではない点に注意が必要です。


 従って、新規性喪失の例外は、緊急避難的に用いるべきであって、原則的には、発表や公表前に出願を済ませておくことが肝要です。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4.事務所からのお知らせ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●株式会社久留米リサーチ・パークのご紹介

 株式会社久留米リサーチ・パークは、福岡県や久留米市などの出資で設立された会社で、福岡県の中小企業を対象に、新技術・新製品開発の支援、バイオ関連事業の海外展開助成、技術情報提供等を行っております。

 新技術・新製品開発の支援については、この会社のテクニカル・コーディネータが企業を訪問し、新技術・新製品開発における課題の把握と、問題解決にふさわしい研究機関シーズを選定し、必要に応じて共同研究・共同開発等のコーディネートを行っています。
 研究機関としては、福岡県工業技術センター、久留米大学、久留米工業大学、久留米高専などが挙げられます。

 先般、本会社主催の産学官テクノ交流会に出席し、本会社が、中小企業と研究機関との橋渡しを行いつつ、テーマの進捗状況の管理等もきめ細かく行っていると感じました。
 皆様も、新技術・新製品開発の際、何かお困りのときは一度ご相談されてはいかがでしょうか。

本会社の詳細は、下記のURLよりご覧ください。
URL: http://www.krp.ktarn.or.jp/


●売買希望の新着商標(アット商標)

 商標ポータルサイト『アット商標』の商標売買フォームに10月に登録された販売希望商標のご紹介です。登録商標や権利範囲の詳細は、『アット商標』トップページの『販売商標一覧へ』ボタンよりご確認いただけます。
 興味のある登録商標がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

<10月1日掲載>
[商標]完勝 (飲料品 等)

<10月31日掲載>
[商標]CLUB BLENDA (個室、派遣による異性の客に対する役務の提供 等)

【アット商標】 http://www.a-shohyo.com/


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