◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆             「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.38
                        発信日:2014年 9月 1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.所長コラム
  ●新人弁理士としての思い

 2.知財ニュース
  ●「有田焼」、中国にて商標登録、中国個人の商標登録取消し
  ●2千葉銀行、知財活用融資の第1号として千葉市内のリサイクル機器会社に

 3.連載 知財講座
  ●第38回:特許「無効審判と異議申立」

4.イベント案内
  ●平成26年度実務者向け知的財産権制度説明会

 5.事務所からのお知らせ
  ●法改正のお知らせ:地域団体商標の登録主体が拡充
  ●売買希望の新着商標(アット商標)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1.所長コラム ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●新人弁理士としての思い

 弁理士の森 博と申します。私は、大学、大学院及び研究機関にて主に水素製造・利用技術、燃料電池、光触媒等の研究に従事した後、加藤特許事務所にて勤務し、昨年弁理士試験に合格して、本年4月に弁理士登録を致しました。

 21世紀に入り、知的財産をもとに製品やサービスの高付加価値化を進め、社会・経済の活性化を図る、いわゆる「知的財産立国」が、日本経済再生のための重点施策として打ち出されましたが、九州には有望な技術を有している企業も数多いにもかかわらず、知的財産制度を有効利用できている企業は決して多くありません。

 これは、九州の多くを占める中小企業では、人的・資金的制約等から、発明等の知的財産の発掘から権利化、さらにはその有効活用まで対応できていないことが一因と考えられます。

 今後も知的財産権の保護対象は拡大される傾向にあり、弁理士の活動の幅がさらに広がるものと思われます。そのため、企業が知的財産権を有効活用して成長するために、弁理士による関与がより重要になると考えています。

 近年、弁理士登録者が増加しましたが、関東や関西に集中しており、九州ではまだまだ数少ないのが実状です。

 また、これまで7年ほど知的財産権に関わる業務を行ってきましたが、特にここ数年で、市場のグローバル化に伴う海外出願の増加やお客様からの依頼の多様化に伴い、弁理士を取り巻く環境や求められている能力が大きく変化したと感じています。

 これから、知的財産の専門家として法的知識と技術的知識を駆使し、お客様にとって何が最適であるかを常に考慮し、従来以上に幅広いサービスを提供できるよう鋭意努力して参りますので、ご指導ご支援を賜りますよう宜しくお願い致します。


                            弁理士 森 博

――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2.知財ニュース ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●「有田焼」、中国にて商標登録、中国個人の商標登録取消し

 有田焼窯元などがつくる佐賀県陶磁器工業協同組合は8月12日、中国商標局に出願していた「有田焼」の一般名称と、毛筆書体の「有田焼」を含むロゴマークなど3件の商標登録を取得したと発表しました。念願だった中国での商標登録が実現したことで、2010年に使用不可が明らかになった「有田焼」の表示問題は全面解決しました。

 中国での「有田焼」商標に関しては、現地の個人が2004年に取得していたことが、2010年の上海万博関連イベントで佐賀県産品展を開催する準備の際に判明し、「有田焼」の名称が使えず、仕方なく原産地表示として「日本有田産」や、「ARITA JAPAN」などローマ字、英語表記を使用していました。

 個人登録による「有田焼」商標は、3年間の不使用により2013年10月に取消しとなり、組合が申請していた「有田焼」が商標登録となりました。

●千葉銀行、知財活用融資の第1号として千葉市内のリサイクル機器会社に融資実施

 千葉銀行は6月30日、5月から取扱いを開始した「ちばぎん知財活用融資」の第1号案件として、各種リサイクル機器の製造・販売を行う千葉市内の三立機械工業株式会社に、運転資金として5年間で1000万円の融資を実行したと発表しました。

 「ちばぎん知財活用融資」は、三菱総合研究所が顧客の保有特許を評価して発行する「企業特許レポート」を活用して、財務諸表には表れない顧客の技術力や商品の強み等を評価して融資する原則無担保の融資制度です。

 千葉銀行は、同社の保有する特許(「粉砕された電線から効率的に銅を回収する技術」)を分析・評価し、融資を実行したとしています。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3.連載 知財講座 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 第38回:特許「無効審判と異議申立」

 特許無効審判とは、一旦特許になった発明に瑕疵(無効理由)があるときに、その特許を無効にすることについて特許庁に請求できる審判手続です。特許権は、特許権者が業として特許発明を独占、排他的に実施できる権利です。しかし、本来登録すべきでなかった発明、または後発的理由により特許を受けることができない発明が権利として存在することは弊害が大きいため、かかる特許を無効とする制度が設けられているのです。

 無効理由は、新規性、進歩性欠如等、特許法第123条に限定的に規定されており、それ以外の理由では請求できません。

 特許無効審判は何人も請求することができます*。ただし、特許が共有者による共同出願違反の場合、または冒認出願を理由とするものは、利害関係人に限り請求が認められています。無効審判の結果、特許を無効とすべき旨の審決が確定したときは、その特許権は初めから存在しなかったものとみなされます。

 一方、瑕疵ある特許の成立を早期・より簡易に防ぐ手段として、特許異議申立があります。我が国では、昭和46年まで出願公告制度と併用した特許異議申立制度が存在していました。しかし、その後、出願公告制度の廃止に伴い異議申立制度は特許付与後の異議申立制度に変わりました。さらに、平成15年には、異議申立制度が無効審判制度に併合され現在に至っております。

 しかし、本年度の特許法改定により、特許の早期安定化等を目的として再び付与後特許異議申立制度が採用されることになりました。施行は来年(平成27年)となります。

 異議申立の理由は、新規性、進歩性欠如等、特許法第113条に限定的に規定されており、それ以外の理由では請求できません。この異議申立は、特許公報発行の日から6ヶ月以内に、何人も請求できます。異議申立の結果、特許の取消決定が確定したときは、その特許権は初めから存在しなかったものとみなされます。

 以上のように、他社の特許を無効にする手続には、特許無効審判と特許異議申立とがありますが、特に、来年復活する特許異議申立制度を有効に活用することが他社の瑕疵ある特許の成立を阻止するための有効な手段となると考えます。その為には、ライバル会社の新たな特許出願を、日頃からウォッチングしていることが肝要です。

* 今回の特許法改正により、改正法施行以降の無効審判請求は、利害関係人に限られることになりました。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 4.イベント案内 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●平成26年度実務者向け知的財産権制度説明会

 特許庁は、知的財産権の業務に携わっている実務者の方などを対象に、制度の円滑な運用を図るため、実務上必要な知識の習得を目的とした実務者向け説明会を9月から12月にかけて全国23地域で開催いたします。

 本説明会では特許・意匠・商標の審査基準やその運用、審判制度の運用、国際出願制度の手続等について、特許庁職員などが説明します。参加は無料です。参加の場合は、事前申込が必要です。九州・沖縄での開催日は、次の通りです。

 福岡市:9/25,11/11,11/20,12/15
 熊本市:9/24,10/15
 那覇市:11/25

 詳細は下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.jiii.or.jp/h26_jitsumusya/index.html


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 5.事務所からのお知らせ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●法改正のお知らせ:地域団体商標の登録主体が拡充

 地域団体商標制度は、地域ブランド保護のため、「地域名+商品(役務)名」等からなる商標について、通常の商標よりも緩やかな条件で商標登録を認める制度です。例えば、「博多人形」「博多織」「はかた地どり」「福岡のり」「八女茶」などが挙げられます。

 これまでは、事業協同組合等に限り、地域団体商標の登録が認められていました。しかしながら今回の法改正により、新たに商工会、商工会議所、NPO法人についても、地域団体商標の登録が認められるようになりました。商工会、商工会議所、NPO法人が、地域活性化のため、その地域に根ざした商品・サービスのブランド化に積極的に取り組んでいる事例は多数あります。

 このようなブランドを適切に管理するには、商標登録をして商標権を取得することが非常に重要となります。商工会、商工会議所、NPO法人の関係者様におかれましては、地域団体商標の登録をすべきかこの機会にご検討頂けましたら幸いです。

 蛇足ながら、農事組合法人は、今回の改正でも地域団体商標の登録が認められるに至っておらず、残念に思います。

●売買希望の新着商標(アット商標)

 商標ポータルサイト『アット商標』の商標売買フォームに7月に登録された販売希望商標のご紹介です。登録商標や権利範囲の詳細は、『アット商標』トップページの『販売商標一覧へ』ボタンよりご確認いただけます。
 興味のある登録商標がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

[商標]fonfun … 電気通信,放送など
[商標]fonfun … 電子計算機用プログラムの提供など

【アット商標】 http://www.a-shohyo.com/

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