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            「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.42
                        発信日:2015年 5月 1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.弁理士コラム
  ●信頼関係と契約社会

 2.知財ニュース
  ●特許庁、新しいタイプの商標出願の公開商標公報や受付件数などを公表
  ●2014年国際特許出願(PCT特許出願)、企業別で1位は中国・ファーウェイ、パナソニックは4位

 3.連載 知財講座
  ●第42回:意匠「部分意匠制度」

 4.事務所からのお知らせ
  ●外国出願にかかる費用の半額の助成

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1.弁理士コラム
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●信頼関係と契約社会

 「約束を守る」ということ・・・これを大事ではないと思わない人はいないでしょう。
 実際、近代の国家はこの「約束を守る」ということを前提にして成り立っていますし、この前提があるからこそ、経済も発展できるわけです。もし、約束が守られない社会があったら、どういうことになるでしょうか。もうビジネスどころではないでしょう。購入代金を払っても品物は来ない。商談もごまかしばかり。こうなったら、商談は成立しません。約束したところで、守られる保証はないわけですから。


 こういう社会しかない国は経済的にかなり苦しくなります。外国からの投資もないだろうし、外国から企業が進出することもないからです。一時期の中国を考えてみれば、よくわかります(もっとも、今でも、その傾向はかなり残っているかもしれませんが)。

 つまり、「約束を守る」ということは、社会や経済が成長するために、最も大事な要素であるわけです。現代では、この「約束を守る」ということを実現するために、契約書を交わすということを行います。

 一昔前の日本では、契約書と言っても、紙一枚とか、せいぜい二枚とか、その程度でした。一方、欧米では、起こりうるケースを全て想定して契約書を作るものですから、一冊の分厚い本みたいになることもしばしばあります。日本でも、これではいけないということで、最近では、契約書も長くなってきました。

 なぜ、こういう違いが起こるのか。欧米では、人は約束を守らないものという性悪説に立つからです。だから、契約書で縛ろうとします。
 では、日本はどうでしょうか。日本人は当たり前すぎて気が付いてないかもしれませんが、「約束を守る」ということについて、日本人はおそらく世界で一番と言える民族です。だから、それほど契約書をうるさく作る必要もないし、欧米人から見たら、いい加減極まりない契約書で済んでいるわけです。

 昔から、商店街には、その地域に根付いた電器店が必ず一つや二つはありました。最近では、家電量販店に押されて、都会ではほぼ全滅状態です。こういう電器店は、家電が故障すれば、電話一本ですぐに来て直してくれる、しかも、ちょっとした修理はだいたい無料。加えて、どんなに古い製品でも、保証期間なんかはまず関係なし。今でも、昔の電器店は重宝した、と言う人はかなりいます。

 なぜ、こうなるかと言うと、次に買うときもその電器屋さんで、という暗黙の了解が双方にあったからです。むろん、契約書なんかを交わす訳ではありません。言うなれば、信頼をベースにしたお付き合いというところです。

 もちろん、量販店では昔の電器店のような訳にはいきません。修理を頼もうと思ったら電話して予約を取らないといけない、無料ということは絶対にない、保証期間内かどうかで料金もかなり変わってくる・・・・という具合です。

 結局、短期的には、欧米式の契約書を交わすのがいいのかもしれません。ただ、長期的に考えると、昔の商店街の電器店のような緩い関係のほうがお互いに得になるような気がします。
 日本人社会は、昔から、このようなコミュニティを上手につくってきました。一見すると、緩すぎる(欧米人から見れば「あいまいな」)約束だけれども、その緩さあるいはあいまいさこそが、結局は、高度な約束の形になっているのです。おそらく、欧米人には理解すらできないでしょう。日本人の昔からの知恵の一つです。

 もちろん、何でも書面で決めておくのが悪い訳ではありません。ただ、どこかぼやかしておく、そういう余裕をもつことが実は良い関係を続けるためには必要になるのではないでしょうか。約束しておくことは、もちろんいいことですが、約束しないことにも実は良さがあるのです。

 当事務所も昔の商店街の電器店のような雰囲気を持っていると思っています。

                       副所長 弁理士 天野 広


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2.知財ニュース
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●特許庁、新しいタイプの商標出願の受付件数や公開商標公報などを公表

 特許庁は4月14日、改正商標法の施行により4月1日からスタートした音や色などの新しいタイプの商標出願について、4月10日までの出願受付状況と公開商標公報を公開しました。
 4月10日までの新しいタイプの商標の出願受付数は総合計515件で、タイプ別では、音166件、色彩203件、位置106件、動き37件、ホログラム3件となっています。

 詳細(公開された商標の一部掲載を含む)については、下記リンクのPDFをご覧ください。
[URL] http://www.meti.go.jp/press/2015/04/20150414001/20150414001.pdf


●2014年国際特許出願(PCT特許出願)、企業別で1位は中国・ファーウェイ、パナソニックは4位へ

 WIPO(世界知的所有権機関)は3月19日、特許協力条約(PCT)に基づく2014年の国際特許出願状況を発表しました。

 出願総数は、前年比4.5%増の約21万5千件で、国別のベスト5は、前年と同じで1位米国で61,492件、2位日本で42,459件、3位中国で25,539件、4位ドイツで18,008件、5位韓国で13,151件となっています。なお、前年と比べて、3位中国が19%増で大きくのび、他の上位国も増加したのに対し、日本は3%減となっています。

 企業別では、中国のファーウェイ(華為技術)が初の1位で3,442件、2位は米クアルコムで2,409件、3位は中国ZTE(中興通訊)で2,179件、4位は前年1位だったパナソニックで1,682件、5位は初のべスト10入りした三菱電機で1,593件となっています。

 詳細は、下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.wipo.int/pct/en/newslett/2015/article_0001.html


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3.連載 知財講座
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第42回:意匠「部分意匠制度」

■部分意匠制度の概要
 意匠登録は、物品のデザインを登録するものですが、日本において、その登録は物品ごとでなければならないと規定されており、原則として、一の意匠出願で「複数の物品」や「物品の一部分のみ」を登録することはできません。

 しかし、例えば、既存の物品の“一部分”を加工して、独創的で特徴的なデザインを施した場合、その物品全体のデザインを登録すると、特徴ある“一部分”が全体のデザインに埋没してしまいかねません。
 そのため、平成10年意匠法改正により、部分意匠制度が開始し、物品全体のうち、独創的で特徴ある一部分のみを登録できるようになりました。

■部分意匠の出願方法
 上述のとおり、意匠登録は物品ごとでなければならないため、通常の意匠出願と同じく、物品全体の正面、平面(上面)、左右側面といった、6面の方向から見た形状を表した図面又は写真の提出が必要となります。そして、この図面又は写真において、部分意匠として登録したい部分と、その他の部分との境界を明確に表さなければなりません。
 境界の表し方には、例えば、以下の方法があります。

(1)部分意匠として登録したい部分を実線、その他の部分を破線で描く。
(2)写真(または3D図面)の場合、部分意匠として登録しない部分を明調色(白っぽい薄い色)にしたり、色味を付けたりして、区別できるように色で分ける。

 また、部分意匠として登録できる部分は、一出願につき一箇所のみであり、物理的に分離している場合は、それぞれについて、出願をする必要があります。ただし、分離していても、機能的に一体となっていたり、対になっていたりして、あわせて一つの意匠と判断されれば、登録が認められます。

■部分意匠の活用について
 登録された意匠が公開される前日までに同一出願人が出願した意匠は、元の出願と一部類似するものであっても登録が認められます。  これを利用すれば、ベースとなる全体意匠を出願した後に、特徴ある部分のみを部分意匠として出願することが可能であり、より充実した保護を図ることができます。

 全体意匠と部分意匠のどちらで出願した方が望ましいか、また、どこまでの範囲を部分意匠として登録すべきか等、難しい面があるかと思います。専門家の視点から、判断、ご提案をさせていただきますので、まずは気軽にご相談ください。


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4.事務所からのお知らせ
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●外国出願にかかる費用の半額の助成

 特許庁は、平成27年度も中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成します。

     補助率:1/2
     上限額:1企業に対する上限額:300万円(複数案件の場合)
案件ごとの上限額:特許 150万円
         実用新案・意匠・商標 60万円
         冒認対策商標 30万円

 本年度より、新たに「ハーグ協定に基づく意匠の国際出願」も支援対象となっております。
 応募期間は、実施機関ごとに異なります。現時点ではまだ発表されておりませんが、申込期限は、去年の場合は6月中旬の例や8月中旬の例もあり、二次募集をする場合もあります。
 応募期間は短いですので、ご注意願います。

 全国の実施機関毎の募集状況や応募資格につきましては、下記のURLをご覧下さい。
[URL] http://www.jpo.go.jp/sesaku/shien_gaikokusyutugan.htm


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加藤特許事務所
 

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