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            「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.43
                        発信日:2015年 7月 1日
                        発信者:加藤特許事務所
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★ 目 次 ★
 1.弁理士コラム
  ●特許法条約への加盟に想う

 2.知財ニュース
  ●特許庁、中小企業の知的財産を融資につなげる金融促進事業を実施
  ●世界で初めて日米間で特許審査の協働調査を開始

 3.連載 知財講座
  ●第43回:海外特許「米国特許出願に関する情報開示陳述書」

 4.イベント案内
  ●平成27年度知的財産権制度説明会(初心者向け)開催

 5.事務所からのお知らせ
  ●アット商標の不具合発生のお知らせ

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1.弁理士コラム
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●特許法条約への加盟に想う

 我が国は、今秋、国ごとに異なる特許の出願手続きを統一する特許法条約(Patent Law Treaty :PLT)へ加盟することになった。この条約は、2000年6月に世界知的所有権機関(WIPO)で採択され、現在欧米を中心に36ケ国が加入しているが、日本は条約への批准を見合わせていた。

 この特許法条約は、(1)各国の言語での出願の容認、(2)出願時の国内代理人の選任規定の解除、(3)所定期間内の手続き不備の救済、の3本柱からなり海外からの出願をよりユーザーフレンドリィにすることを目的とするものである。

 ところで、私は、この条約締結の為の第1回専門家会議(1995年12月)に太平洋知的財産協会から派遣されオブザーバーとして参加する機会を得た。
 スイスのジュネーブにあるWIPOの国際会議場には世界各国の政府(特許庁)代表者、弁理士、知財関係者が集合し活発な議論がなされた。
 特許法条約の検討は、世界の特許制度の実体的調和(ハーモナイゼーション)を目指し1985年に開始されたが、米国が先発明主義に固執し採択に至らなかった。
 当時は、米国の先発明主義を先願主義に変えさせることが最大の懸案事項であったが、米国での政権交代もあり実現は遠い夢のように思われた。

 そこで、当時のWIPOボクシュ事務局長の提案で先願主義等の実体面以外の手続き面での調和を図ることとしたものである。日本は、この条約締結に中心的な役割を果たしたが、諸般の事情により加盟を見送り今日に至っていた。

 その後、GATTウルグアイ・ラウンドでのTRIPs協定の締結、米国の先願主義への移行およびこのPLTへの加盟、そして中国での特許出願の激増等、知的財産を巡る世界の情勢は激変した。プロパテント化が進み各国での特許出願が増加するなか、残念ながら日本のみが出願件数を減らしている。

 特許法条約は、前記のように外国からの出願に対する出願人の負担を軽減し、我が国への出願の増加を呼び込む一助となることが期待される。また、一方で、この条約の加盟は、我が国の企業にも海外出願での利便性を高めることになる。

 20年前に本条約の審議を直接見てきた実務者の一人として、この条約が実際に活用されることを願っている。

                          弁理士 久保山 隆


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2.知財ニュース
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●特許庁、中小企業の知的財産を融資につなげる金融促進事業を実施

 特許庁は5月20日、中小企業の知的財産の価値を「見える化」することで、金融機関からの融資につなげるための取組みである「知財金融促進事業」を開始すると発表し、この事業の一環として、中小企業の知財を活用したビジネスを評価する「知財ビジネス評価書」の作成支援事業者の募集を同日から開始しました。

 知財ビジネス評価書の作成支援については、金融機関から申請を受け、融資を検討している中小企業の知的財産を活用したビジネスについての評価書を、提携調査会社等が作成し、金融機関に無償で提供します。
 金融機関は、この評価書により中小企業の特許や技術等がどのようにビジネスに貢献し、利益を生み出しているのかが把握でき、経営評価をすることが可能になります。

 詳細は、下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150520003/20150520003.html


●世界で初めて日米間で特許審査の協働調査を開始


 特許庁は5月21日、米国特許商標庁との間で、今年8月1日から日米協働調査を開始すること等に合意したと発表しました。
この日米間の審査協力の強化により、我が国企業等は、より強く安定した権利を、日米両国それぞれにおいて早期かつ同時期に得ることが可能となり、より円滑な国際事業展開の促進や、日本の審査結果の諸外国からの信頼の一層の向上が期待されるとしています。

 詳細は、下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150521001/20150521001.html


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3.連載 知財講座
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第43回:海外特許「米国特許出願に関する情報開示陳述書」

<1.制度について>
 米国の特許制度と日本の特許制度とは異なる点が数多くありますが、特に異なるものの例として、情報開示陳述書(IDS)の提出義務が課される点が挙げられます。
 出願人が出願発明の特許性に関する重要な情報を知っている場合、米国特許商標庁にIDSとして提出する必要があります。
 これは、出願発明の特許性に関する重要な情報を知っているにもかかわらずそれを開示しないのは、特許庁に対する誠実義務に反するため、衡平法の観点から権利行使を認めないとするものです。
 すなわち、IDS提出義務に違反すると、せっかく取得した米国特許権を行使できないことになる可能性があります。

<2.提出すべき情報>
 IDSとして提出すべき情報は、米国特許出願をした発明の特許性の判断において重要性が高い情報です。
 例えば、PCT国際出願の国際調査報告、欧州特許庁のサーチレポートで引用された文献は提出すべきといえます。
 また、米国特許出願に対応する外国出願の拒絶理由を構成する文献も提出すべきといえます。
 このため、米国以外の国の対応出願についてオフィスアクションが通知されたら、米国特許商標庁にIDSを提出すべきか検討する必要が生じることになります。出願国が増えるとIDS提出要否の監視負担が増えることから、効率的な出願情報管理が必要となります。

<3.提出時期>
 IDS提出義務は、米国出願をしたときから、米国特許が発行されるまで続きます。
 出願がどの段階にあるかによって具体的な手続は異なりますが、一般的な手続の概略は以下の通りです。
 出願時にIDSを提出する場合は、IDS提出の庁費用なしに提出することができます。
 最初のオフィスアクション通知後は、例えば外国出願のオフィスアクション送付日から3ヶ月以内にIDSを提出することとなります。
 最後のオフィスアクション通知後や許可通知後は、さらにIDS提出庁費用の納付が必要となります。
 しかしながら、許可通知が出され、発行手数料を納付した後でIDSを提出する場合は、特許発行料納付を取り下げ、継続審査請求(RCE)を行い、IDS提出庁費用を納付するという複雑な手続きが必要となります。

<4.その他>
 提出する文献が英語以外の場合は、簡単な説明を提出することが必要です。
 文献の完全な英訳を提出すれば、簡単な説明は不要となりますが、翻訳費用は無視できません。
 そこで、部分訳や要約の英訳を提出することで簡単な説明の代用とすることが考えられます。ただし、特許性に関する重要な情報が漏れなく記載されているか注意をする必要があります。

 このように情報開示義務の制度は、出願人に重い負担を与える制度といえますが、無事に米国特許が発行されるまで気を抜かずに対処する必要があります。


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4.イベント案内
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●平成27年度知的財産権制度説明会(初心者向け)開催

 特許庁は、7月上旬から9月下旬にかけて、全都道府県で、これから知的財産権制度を学びたい方、知財部門に新しく配属された方などの初心者の方を対象に、知的財産権制度説明会を開催します。

 参加は事前の申込みが必要です。参加費は無料ですので、この機会にぜひご参加ください。九州・沖縄での開催日は、次の通りです。

福岡:8/4,9/24、佐賀:9/16、長崎:9/7、熊本:7/21
大分:8/28、宮崎:7/28、鹿児島:9/2、沖縄:8/20


 詳細は、下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/ibento2/h27_beginner.htm


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5.事務所からのお知らせ
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●アット商標の不具合発生のお知らせ

 大変ご好評頂いております商標出願・商標売買専門のポータルサイト「アット商標」ですが、サーバーの不具合により、サイトを閲覧できない状態となっております。
「アット商標」をご利用中の皆様には多大なるご迷惑をおかけしております。

 早急に復旧をするように致しますので、今しばらくお待ち下さいますようお願い致します。


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加藤特許事務所
 

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