◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
            「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.46
                        発信日:2016年 1月 4日
                        発信者:加藤特許事務所
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
 
★ 目 次 ★
 1.弁理士コラム
  ●新春を迎えて

 2.知財ニュース
  ●ノンアルコールビール特許訴訟、一審敗訴のサントリーが控訴

 3.連載 知財講座
  ●第46回:特許「プロダクトバイプロセスクレーム」

 4.イベント案内
  ●平成27年度 営業秘密・知財戦略セミナー

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.弁理士コラム
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●新春を迎えて

 新年明けましておめでとうございます。
 旧年中は皆様には大変お世話になりました。
 お陰様で、特許業界が大変苦しい中、加藤特許事務所は良い成果を残すことができました。

 昨年は創業21年目ということで、初心に帰り、創業時にやっていたように様々な会合に顔を出すことに努めました。

 私が加藤特許事務所を創業した1994年は日本経済が右肩下がりの経済成長を辿ることとなるスタートの年でした。今考えれば、当時はまだまだ日本も元気があったように思います。当時大企業のお客様とは殆ど縁がなかったのですが、地場の中小企業の中には開発意欲にあふれた経営者がたくさんおられたように感じておりました。

 昨年、久しぶりに様々なベンチャー企業経営者とお会いして感じたことは、20年前と大きく様変わりしたということです。
 その一つは、経営者がずいぶんと若返ったこと(私が年をとったのでそのように感じるのかもしれませんが)、二つ目は小さな企業でも、どんどんと海外に出ていくようになったこと、三つ目は、ビジネスのネタを探しそれをきちんとビジネスとして成り立たせる能力に優れた人たちが多くなったということです。

 最後の「ビジネスとして成り立たせる能力」について少しばかり補足いたしますと、あまり具体的なことは言えませんが、世の中に今までもごく当たり前にあったビジネス形態の問題(歪)を見つけ出し、その歪を解消するサービスを提供するビジネスを始めた方がいます。
 わかりにくいと思いますが、一見ビジネスが成り立ちそうにないところに着目し、きちんとビジネスとして成り立たせ、上場も視野に入るところまで成長させたのです。
 
 この経営者をみていると、小さなことに気付く能力があれば、ビジネスチャンスはどこにでもあるのだと痛感しました。
 これからの経営者に必要なことは、高度の技術でも大きな資本でもなく、当たり前に行われているビジネスの些細な問題や歪をいち早く発見し、その問題や歪をどのようにしたら解決できるかを考え、その中にどのようなビジネススキームを構築するか、の能力ではないかと思います。
 そのような構想力、ビジネススキーム構築能力があれば、今の時代、問題解決手段をいろいろと見出すことができます。

 このような経営者がたくさん出てくれば、日本の将来は明るいと思います。

 話は変わりますが、私どもが属しております特許業界もこの20年で大きく変わりました。信じられないほどの変貌といっても決して過言ではありません。
 つい最近まで、いわゆる「特許の雄」として知られた、パナソニックは出願方針を大きく変えましたし、日本を代表する、東芝やシャープなどがひん死の状態にあるのはご存じのとおりです。加えて、弁理士数の無秩序な増加で、経営が厳しい特許事務所も多数あるようにきいております。

 しかしながら、私は今こそ弁理士の真価が問われているのだとそう思っています。特許制度を代表とする知的財産制度が企業経営にとって大切なものであり、また、弁理士という職業がお客様に真に必要なものであり、そしてお客様のニーズにあったサービスを提供することができるのならば、必ずや生き残れると確信しております。

 ご存じの方も多いと思いますが、創業時に「石川 洋」氏の次のような詩に出会いました。

『あなたの仕事がお客様にとって真にかけがえの無いものであれば、決して廃れることはない』

 弁理士として、特許事務所として、一介の人間として、今は気づいていないけれど、お客様に提供しなければならないサービス、言い方を変えれば今のやり方の問題や歪は山ほどあるように思います。

 私は、先のベンチャー企業経営者に見習い、本年は、今の特許業界が抱えている問題や歪を是正し、お客様が必要とされる真のサービスを提供し「お客様にとって真にかけがえの無い」存在に一歩でも近づきたいと思っています。

 今年一年が、皆様にとって良い年になりますようご祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

                         代表 弁理士 加藤 久


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2.知財ニュース
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●ノンアルコールビール特許訴訟、一審敗訴のサントリーが控訴

 サントリーホールディングスが、ノンアルコールビールの特許を侵害されたとして、アサヒビールの「ドライゼロ」の製造・販売差止め等を求めていた訴訟で、サントリーは11月12日、同社特許(特許番号 第5382758号)の有効性を認めず請求を棄却した一審の東京地裁判決を不服として、知財高裁に控訴しました。

 2013年に取得したこの特許は、糖質やエキス分などを一定の範囲にしたノンアルコールビールの特許(いわゆる数値限定特許)です。

 サントリーは、「ドライゼロ」はこれらの成分の数値が特許の範囲内として、2015年1月に、アサヒビールを提訴していましたが、一審の東京地裁が10月29日、「この特許は同業者なら容易に考えつくもので、無効にすべき」として、サントリー側の請求を棄却する判決を下していました。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3.連載 知財講座
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
第46回:特許「プロダクトバイプロセスクレーム」

 プロダクトバイプロセスクレーム(product-by-process claim、以下、「PBPクレーム」という。)とは、物の発明を、その物の製造方法によって特定する請求項(クレーム)を意味します。

 物の発明は、原則、その構造又は特性により特定することが求められます。しかしながら、化学合成物質、生体合成物質、天然素材からの抽出物等については、その構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在する場合があります(実際的でないとは、例えば、その特定には現実的でない回数の実験等を重ねることが必要な場合で、事案に応じて異なります)。

 このような物質を、物の発明として特許権で保護するために、その物質を製造方法によって特定する、PBPクレームとして出願することが認められています。

 特許庁審査基準においては、PBPクレームが対象とする発明は、最終的に得られる物自体であると認定することとされています。
 そのため、(製造方法が異なる)同一の物質が既に存在している場合には、PBPクレームにおける製造方法の規定が最新であっても、新規性が欠如していると判断され権利化することはできません(この場合には、「製造方法の発明」として権利化するは可能)。
 そのため、開発した新規の物質の特定が困難であり、特定に時間を要す場合等には、最先の出願とするために、「PBPクレームで物の発明」とすると共に、「製造方法の発明」としてもクレームすることが有効です。

 また、PBPクレームにおいて、「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、「出願時において、発明に係る物が、構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在」するときに限られ、このような事情がない場合には、発明が不明確であると判断されますので注意が必要です。

 一方、権利化後のPBPクレームの技術的範囲の解釈は、審査段階とは事情が異なり、(i)製造方法の相違にかかわらず権利範囲に含まれるとする解釈、(ii)同一の方法によって製造されている物のみが権利範囲に含まれるとする解釈、があります。

 日本の裁判例では(i)の解釈が多いですが、発明の内容や特許明細書の記載から(ii)の解釈が採用された例もあります。また、主要国でも同様に、(i)の解釈が多いといえますが、(i)の解釈をあまり認めない国もあり、また、案件によってケースバイケースといえます。

 このように、PBPクレームは、構造又は特性による特定が難しい場合に、出願時において非常に有効な表現方法ですが、権利化後にはその解釈が争点になることもあることにご留意ください。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
4.イベント案内
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●平成27年度 営業秘密・知財戦略セミナー

 近年、重要な技術情報が第三者へ漏洩する技術流出が問題となっており、大企業に限らず中小企業においても大きな経営リスクとなっています。
 この経営リスクを極力回避するためには、貴社において新たな生まれたアイデアやノウハウについて、特許による権利化を行うか、又は営業秘密として秘匿化するかなどといった知財戦略が経営上、重要となってきています。

 このような状況を踏まえ、営業秘密の管理・活用方法及び知財戦略に関するセミナーが下記の要領で開催されます。参加には事前申し込みが必要です。また、参加は無料です。

・日時:平成28年1月22日(金)14:00~16:50
・場所:TKPガーデンシティ博多アネックス ネプチューン
     (福岡市博多区博多駅前4-11-18)

詳細は、下記のURLをご覧ください。
[URL] http://www.inpit.go.jp/katsuyo/tradesecret/27fyseminar.html


-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

※メールマガジン配信停止・変更方法について
<配信停止>
 タイトルに『配信停止』をご記入のうえ、空メールをmail@kato-pat.jp宛にお送り下さい。
<配信先変更>
 タイトルに『配信先変更』と、本文に変更後の名称やアドレスをご記入のうえ、mail@kato-pat.jp宛にお送り下さい。

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

加藤特許事務所
 

 編集・発行: 加藤特許事務所 -メルマガ事務局-
 福岡市博多区博多駅前3丁目25番21号 博多駅前ビジネスセンター411号
 URL:http://www.kato-pat.jp/
 TEL:092-413-5378 E-mail:mail@kato-pat.jp
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆