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    「加藤合同国際特許事務所~知財とびうめ便り~」 Vol.71

   発信日:2020年 3月 2日   発信者:加藤合同国際特許事務所
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◇ 目 次 ◇

1.弁理士コラム
  ◆知的財産に関連する法律の改正

2.知財ニュース
  ◆再生医療の特許出願 中国 驚異の件数で首位確保

3.連載 知財講座
  ◆第71回:特許「新規性喪失の例外」

4.事務所からのお知らせ
  ◆意匠法改正のご案内(令和2年4月1日施行)

5.所員ほのぼの日記
  ◆世界の木下大サーカス

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 1.弁理士コラム
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◆知的財産に関連する法律の改正

 意匠法 (一部編集)
第二条 この法律で「意匠」とは、
・[条文(1)]物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。(施行日:令和二年一月一日)
・[条文(2)]物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合、建築物の形状等又は画像であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。(施行日:令和二年四月一日)

 これらは、デザインを保護するための意匠法の条文です。実際は、もっと長いですが、読みやすいようにかっこ書きを省略しています。なお、かっこ書きの中も非常に重要です。

 さて、特実意商などの産業財産権や知的財産に関する法律等は、比較的頻繁に改正が行われます。時代とともに社会や世界、諸外国の変化により、産業形態等も急速に変わり、知財制度はそのときに適したものとする必要性が高いためです。

 昨年、意匠法の大改正が決まり、令和2年4月1日から施行される意匠法では、意匠を定義する第二条等も大きく変わります。詳しい改正内容については、本メルマガ内「4.事務所からのお知らせ」等でもご案内しますので、私は少し違う観点から改正に触れたいと思います。

 冒頭の条文(1)は、本メルマガ発行時点のいわゆる現行法です。条文(2)は、改正後です。改正後は、「建築物」と「画像」も意匠の定義に含まれ、保護対象となります。

 私が弁理士試験を受けたころから、意匠の定義は「ぶつけしび」、その物品(ぶつ)は「ゆてしとこ」という語呂で覚えていました。従来、「不動産」は意匠法の保護対象ではなく、“ゆ”の語呂は「有体物たる動産であること」と覚えました。しかし、今回の改正で不動産の「建築物」も保護対象となります。

 「すいへいりーべーぼくのふね」の語呂は多分一生変わりません。しかし、知的財産制度の変化は多く、来年からは、意匠の定義や説明、対象、運用も大きく変わります。(ちなみに商標の定義等も数年前に大きく変わりました。)

 単に試験のための勉強と思うと大変ですが、時代のニーズに合わせて柔軟に運用するための改正が行われることは良いことだと思います。その改正に合わせてお客様の利益となれるように、日々、精進してよりよい仕事ができるように私も改正していきたいと思います。

 副所長 弁理士 遠坂 啓太


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 2.知財ニュース
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◆再生医療の特許出願 中国 驚異の件数で首位確保

 日本経済新聞と知的財産データベースを運営するアスタミューゼ(東京・千代田区)とが、共同で再生医療関連の特許出願について報告しました。

 再生医療の分野において、中国の驚異的な躍進を示しています。米国は研究開発では長く1強状態を続けていましたが、2015年の特許出願件数で中国が逆転し、17年の中国の特許出願が1241件で米国の635件の約2倍になっています。また、中国はバイオ医薬品の量産技術や細胞の培養方法などの「周辺特許」を押さえ、米国は「基幹特許」を押さえる違いも鮮明になってきました。

 日本では、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長がけん引する先進的なイメージが強いのですが、特許の出願件数では13年以降、韓国の後塵を拝し、17年の日本は約270件、韓国は約360件となっており、日本の停滞が浮き彫りになっています。

 今後、バイオ医薬品の重要な生産技術の特許を海外企業に押さえられ、日本で研究はできても生産・販売することができないような状況になることも考えられます。


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 3.連載 知財講座
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◆第71回:特許「新規性喪失の例外」

 発明や考案、意匠について特許権、実用新案権、意匠権を取得するためには、新規性(新しいものであること)が求められます(特許法第29条第1項、実用新案法第3条第1項、意匠法第3条第1項)。なぜならば、既に誰もが知っている発明などについて独占権を与えるのは、社会に百害あって一利なしだからです。

 よって、出願前に公知や公然実施となった発明などについては、例えそれが論文発表や先行販売などといった自身(出願人)の行為に起因するものであっても、新規性欠如(新規性を喪失している)の拒絶理由が通知され、特許などを受けることができません。

 しかし、一定の条件を満たすことで、この新規性欠如の拒絶理由を回避することができます。これが、新規性喪失の例外規定です。

 特許の場合、満たすべき一定の条件は以下となります(特許法第30条)。
・新規性を喪失した日から1年以内に出願すること。
・新規性喪失の例外規定を受ける旨を記載した書面を、出願と同時に提出すること。
・証明書を出願の日から30日以内に提出すること。

 この新規性喪失の例外規定もここ数年間で改正が入り、例えば、平成23年改正においては、インターネットなど公開態様の多様化により、適用範囲が拡張され、公開態様に制限がなくなりました(以前は、新規性喪失の例外規定を受けることができるのは一部の公開態様だけでした。)。また、平成30年改正においては、新規性喪失の例外期間が「6月」から「1年」に延長されました。

 しかし、新規性喪失の例外規定を適用して外国出願する場合、例えば、米国は日本と同様に新規性を喪失した日から1年以内に出願すればよいのですが、欧州や中国では6月以内に出願しなければなりません。また、欧州や中国は、発明を博覧会で展示して新規性を喪失した場合、政府若しくは政府許可の博覧会への展示しか新規性喪失の例外規定の適用が認められていません。このように、規定の内容は各国毎に異なっているため、十分注意が必要です。

 そして、あくまで例外規定が適用されるのは「自身」の行為についてなので、論文発表を行った後、第三者がその論文に掲載されていた出願人の発明を参考に改良発明を完成させて先に出願した場合、その改良発明を理由に新規性欠如や進歩性欠如となる恐れがあります。

 よって、新規性喪失の例外規定はあくまで「例外」であって、論文発表や先行販売を行う前に出願しておくことをお勧めします。そのためには、逆算して、いつまでに発明の内容を固めておくべきか、いつまでに特許事務所へ依頼するかなど、日々の知財管理が重要になってくると思います。

 弊所では知財管理のコンサルや、または諸事情(論文発表を予定しているなど)により緊急で出願が必要な場合の対応もしておりますので、気軽にご相談下さい。


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 4.事務所からのお知らせ
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◆意匠法改正のご案内(令和2年4月1日施行)

 令和2年4月1日に施行される令和元年意匠法では、大幅な改正がなされ、保護できる意匠の対象が拡充されるとともに、関連意匠の汎用性が高まります。また、権利期間が現在より実質的に長くなります。以下、簡単にご紹介します。

〇改正ポイント(1)~保護対象の拡充~
 現行法では、物品(不動産は含まない。)の外観デザインのみが保護対象とされていますが、これに加えて、以下のようなものが保護対象になります。
 ≪建築物の外観≫
   →改正意匠法では、建築物を「土地に定着させる人工構造物または土木構造物」と定義しています。例えば、住宅、学校、工場、競技場、橋梁、煙突、など(一時的に設営される仮設テントは除く。)が該当し、このような建築物の外観デザインを保護できます。
 ≪内装≫
   →店舗、事務所、その他の施設(人が内部に入り一定時間を過ごすためのあらゆる施設で、動産も含む。)の内装を保護できます。壁などで分断されない一つの空間における統一されたデザインが一意匠となるため、例えば、部屋によって内装のコンセプトが異なるホテル・旅館等の商業施設においては、部屋別に登録の検討が必要となります。
 ≪画像≫
   →現行法では、画像の登録は、「何らかの物品の一部に表示されたもの」に限られていますが、法改正によって「画像そのもの」を登録できるようになります。これにより、例えばクラウド上から提供される画像のように、物品から離れた画像デザイン自体を保護できるようになります。また、それらの画像が、物品以外(例えば壁や床、人体等)に投影される場合も保護対象になります。

〇改正ポイント(2)~権利期間の変更~
 現行法では、意匠権の存続期間は、「登録日から20年」ですが、令和2年4月1日以降の出願においては、「出願日から25年」となります。
 現在、意匠は出願から1年以内に、最初の審査がほぼ完了するため、この期間が維持され、順調に登録になれば、実質、24年程度は権利の保有が可能になります。

〇改正ポイント(3)~関連意匠~
 関連意匠とは、自己が先に出願した意匠に類似する意匠の登録を認める制度です。現行法では、「先の出願をした日から、この意匠の公開日前まで」に、関連意匠を出願しなければなりませんが、出願可能期間が、「先の出願の日から、10年を経過する日前まで」に延長されます。また、これまで認められなかった関連意匠にのみ類似する意匠の登録が認められます。

〇改正ポイント(4)~組物の意匠~
 組物の意匠とは、例えば統一デザインのナイフ・フォークやトランプのように、複数の物品であっても統一されたデザインで一定要件を満たすものを一意匠として登録できる制度です。現在、組物の意匠には部分意匠が認められていませんが、令和2年4月1日以降は、組物の意匠にも部分意匠が認められます。

 このほか、来年5月までには「複数の意匠を一括して出願できる制度の導入」や「優先権の救済措置の拡充」等も予定されており、さらに意匠登録を活用できる幅が広がります。

 まずは、建築物の外観・内装や、画像の保護対象化に伴い、建築デザイン、空間デザイン、webデザイン等に携わっている方々は、今後、意匠登録の検討が必要になるかと思います。新しい制度なので不確定な要素もありますが、詳細を知りたい方はどうぞ気軽にご相談ください。


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 5.所員ほのぼの日記
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◆世界の木下大サーカス

 先日、「世界の木下大サーカス」へ行って来ました。
 人生初サーカスです。
 ホワイトライオンの猛獣ショー、目隠しして飛ぶ空中ブランコなど、世界3大サーカスと言われるだけの迫力の2時間でした。

 猛獣ショーでは、円形のステージに沿って5-6匹のライオン達が各々の椅子にちょこんと座り、おとなしく出番を待っています。
 出番が来るとステージを1周し、階段を飛び越えたり、立ち上がったりします。
 (それはおそらく、彼らのほんの1割程度の駆け足のスピードで。)

 今回、リングサイド(円形のステージ)の前から2列目の指定席を運良く購入できました。座席と座っているライオンとの距離は柵を挟んでわずか1-2メートル程でした。
 みんな怖くないのかな?と思ったのですが、前列の1列目に座っていた女の子(推定5歳くらい)は食い入るように見ており、周りの小さな子ども達も泣いたりすることはありません。子供達は純粋にじっと楽しんでいるようでした。

 子供ではない私からすると、近くに座っているライオンの後ろ姿はなんとなく寂しそうに思えて仕方なかったのですが、不意にこちらを向くその目はやはり鋭く、たまに唸り声が聞こえては猛獣であることを思い出せます。

 ライオンの鋭く冷たい目は、
 「人間って馬鹿だね」「いつでも柵を乗り越えてゆけるよ」
 そう言っているようで、
 野生とはかけ離れた環境が何だか可哀相だなと勝手に思いながら見てしまいました。

 しかし実際は豊富な餌と暖かな寝床でとても快適に過ごしているのかもしれません。

 ああ幸せとは何だろう、などとまで考えさせられた次第です。

 ともあれ、「世界の木下大サーカス」はとてもおすすめです。
 私が座ったリングサイド席では、演者の深呼吸する様や、筋肉の震えも見ることができました。

 なお、福岡公演は3/8(日)までです。
 お時間のある方はぜひ足を運んでみてください。

(※本記事は2月中旬に執筆したものです。残念ながら2/29以降の福岡公演は中止となってしまいました。またの来福に期待です。)

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