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「加藤合同国際特許事務所~知財とびうめ便り~」 Vol.81
発信日:2021年 11月 1日 発信者:加藤合同国際特許事務所
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◇ 目 次 ◇
1.弁理士コラム
◆令和の下町ロケット
2.知財ニュース
◆日本製鉄、トヨタと中国大手の宝山鋼鉄を特許侵害で提訴
3.連載 知財講座
◆第81回:特許「訂正審判」
4.事務所からのお知らせ(イベント含む)
◆競合他社特許情報提供サービスのご紹介
5.所員ほのぼの日記
◆秋は蜘蛛の巣とともに
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1.弁理士コラム
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◆令和の下町ロケット
今年の夏に、任天堂とコロプラ(オンラインゲームの開発・運営企業)の特許権侵害訴訟の和解が成立しました。
これは、任天堂が4月に損害賠償請求金額を「49億5千万円及び遅延損害金」から「96億9千9百万円及び遅延損害金」に大きく変更したこともあり、世間からの注目も集まっていました。
コロプラが8月4日付けで出した「和解による訴訟の解決及び特別損失の計上に関するお知らせ」によると、任天堂に和解金として総額33億円を支払うことで、任天堂が訴訟の訴えを取り下げることとなったようです。
また、任天堂が同日付けで出した「特許権侵害訴訟の和解成立のお知らせ」によると、本件訴訟に係るその他の和解条件については秘密保持義務により公表されない(公表できない)ようなので、コロプラには他にも今後の知的財産権に関する条件が課せられたことが想像されます。
一方、現在も続いている特許権侵害訴訟に、アスタリスクvsファーストリテイリングがあります。
ファーストリテイリングとはユニクロやGUを傘下に持つ会社で、社長はあの柳井正氏です。従業員数は連結で5万6千人を超え、資本金は100億円以上の大企業です。
それに対して、アスタリスクは大阪に本社を構える従業員数が100名程度のIT企業です。
この特許権侵害訴訟(以下、「本訴訟」と称します)は、アスタリスクが、自社の保有する特許権(特許第6469758号)をファーストリテイリングが侵害したとして、特許権侵害行為差し止めの仮処分を求めて東京地裁に申し立てたものです。今から約2年前、2019年9月24日のことです。
この特許に係る発明はRFタグから情報を読み取る装置で、いわゆるセルフレジに関する特許です。該特許権には複数の分割出願(子出願、孫出願)が存在しますが、ここではその詳細は割愛させて頂きます。
ファーストリテイリングは、アスタリスクが保有する特許は無効であると主張し、特許無効審判を請求しました。つまり、ファーストリテイリングは、上記特許権に係る発明には新規性や進歩性が無いと主張し、アスタリスクが保有する特許を無効にすることを特許庁に求めました。
これに対して特許庁(審判官)は、請求項1,2及び4に係る発明についての特許は無効であると判断しました。しかし、請求項3に係る発明についての特許だけは、有効であると判断しました。
要するに、請求項1~4のうち請求項3だけが生き残る審決がなされたわけですが、両者はこれを不服として、知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起しました。
この判決が今年の5月20日に出て、知的財産高等裁判所は、請求項1~4全てが有効であると判断しました。
全てが有効であると判断されたので、ファーストリテイリング側の主張は認められなかったことになります。
敗訴したファーストリテイリング側は、6月2日に最高裁判所に上告を行っています。
日本では三審制が採用されており、特許庁(審判官)が第一審、知的財産高等裁判所が第二審に相当します。本訴訟に決着が付くのは、もう少し先の話になりそうです。
なお、上記特許権は、今年の頭に株式会社NIP(ニップ)に譲渡されています。よって、上記特許権の現在の特許権者はNIPです。そして、NIPは自社HP上で、特許ライセンスの一般提供を開始しています。
ライセンス料はセルフレジ1日1台1,000円で、100台使わせてくれという企業があるとすると、1年間(365日)で3,650万円のライセンス料が入ってくる計算です。
さらに、NIPとアスタリスクはつい最近(10月7日付けで)、ユニクロに対して従来の特許侵害差止に加え損害賠償の請求を追加したことを報告しています。
任天堂がコロプラへの損害賠償請求金額を倍近く変更した時のように、NIP・アスタリスク側には非常に強気の印象を受けます。
実際、ファーストリテイリングから上記特許権に請求されている特許無効審判はここで紹介したもの以外にもあります。
ファーストリテイリング側は手を替え品を替え、どうにかして上記特許権を潰そうとしている印象を受けます。
そのため、本訴訟でNIP・アスタリスク側が勝訴したとしても手放しで喜べないところはあるのですが、素晴らしい技術が特許により保護され、利益として還元されるのであれば、まるで池井戸潤氏の小説「下町ロケット」の1シリーズのようではないでしょうか。
弁理士 宇野 智也
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2.知財ニュース
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◆日本製鉄、トヨタと中国大手の宝山鋼鉄を特許侵害で提訴
日本製鉄は、10月14日、電動車(電気自動車・ハイブリット車)のモータなどに使用される「無方向性電磁鋼板(電磁鋼板)」に関する同社の特許権を侵害したとして、トヨタ自動車と中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄を同日付で東京地裁に提訴したと発表しました。
具体的には、トヨタと宝山に対してそれぞれ約200億円の損害賠償を求めるとともに、トヨタには日本製鉄の特許を侵害していると考えられる宝山製の電磁鋼板を使用しているモータを搭載した電動車の製造・販売差し止めの仮処分を申し立てました。
背景には、日本製鉄にとって、高マージンで量も確保できる電磁鋼板のような製品の売り上げは何としても確保したいという意図があったと思われます。今後の裁判の行方が気になるところです。
なお、この無方向性電磁鋼板は、モータのコア材料などに使われる高機能材料で、特定の方向のみに磁気特性が偏るのを防ぐために、鋼板の面内でランダムになるように結晶方位を制御して造られており、モータやトランスなどに広く採用されています。
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3.連載 知財講座
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◆第81回:特許「訂正審判」
特許出願は、審査請求や審判等を経て登録されます。このため、登録されている特許は問題が少ないはずです。
しかし、登録後に何らかの問題があることがわかった場合には、適切な状態に修正することが求められます。
このようなとき、「訂正審判(特許法126条)」を請求することができます。
訂正審判は、特許権者が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求する審判です。訂正審判は、その目的、すなわち具体的な内容にも多くの制限があります。
訂正審判の件数は、特許行政年次報告書2020年版によると、2010年~2019年の間は、129件~238件程度であり、出願・登録される特許の件数と比べるとかなり限られています。
しかし、訂正審判や訂正の請求が求められる状況の多くは権利行使などのときと考えられます。
件数は少ないものの、このような重要な局面で求められる訂正も見据えて出願や中間処理、分割出願等を行うことも重要です。
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4.事務所からのお知らせ
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◆競合他社特許情報提供サービスのご紹介
弊所で提供しているサービスのうち、競合他社の特許情報提供サービスをご紹介いたします。
どのような企業でも、気になる競争相手が一つや二つは、あるかと思います。
そのような企業の特許情報を、例えばまとめて年2回程度(要望により増やすことも可能)提供いたします。
提供した情報を基に競争相手の開発動向を把握したり、又は分析次第では特許回避策をとることもでき、将来のビジネス展開に活かせると考えます。
本サービスについてご関心にある方は、お気軽にご連絡ください。
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5.所員ほのぼの日記
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◆秋は蜘蛛の巣とともに
最近、屋外に出ると、蜘蛛の巣をそこかしこで見かけます。
夏の間は見かけた記憶がないのですが、今では、見過ごせないほど立派な蜘蛛の巣があちらこちらで見られ、その中央には、黄色と黒の縞模様が特徴的な派手な蜘蛛が鎮座しています。
思えば毎年、ある時期になるとやたらと蜘蛛の巣を見かけるようになるなと思ったので、調べてみました。
あのビジュアルはどうやら女郎蜘蛛らしく、秋は女郎蜘蛛の活動期で、産卵に向けて捕食に精を出しているようです。
確かに、記憶を辿ると、枯葉が蜘蛛の巣に引っかかっている様子を思い出せます。あのやたらと蜘蛛の巣を見かけていた季節は、秋に違いありません。
蜘蛛は益虫であり、害虫を食べて駆除してくれると聞いていたので、見かけてもギョッとすることはないのですが、あまり得意ではありません。
女郎蜘蛛は見た目が毒々しいのでなおさらです。
その見かけから儚さとは無縁のようですが、女郎蜘蛛は短命で、産卵を終えた12月頃には死んでしまうそうです。ということは、今、若干の気持ち悪さとともに眺めている蜘蛛たちも、あと一か月もして冬が到来すれば、天に召されてしまうことになります。
秋は、食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、とはよく言いますが、蜘蛛の巣と共にやってきて、蜘蛛の巣と共に去っていく季節でもあるのだと、今更ながらに気づきました。
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★ 編集・発行:加藤合同国際特許事務所 -メルマガ事務局-
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